|
カテゴリ:読書
「死の蔵書」(ジョン・ダニング)を読みました。確か、何週か前の朝日新聞の土曜版に紹介されていました。
タイトルや表紙のデザインから、重く暗い話かと想像していましたが、違いました。 ミステリ小説ですが、古書に関するうんちくがいっぱい出てきて、本を読む人間にとっては、そちらの方が気になり、犯人は誰かや事の真相に考えをめぐらす余裕がなくなってしまいます。 最後に畳み掛けるように、複雑な構図が明らかとなって、お?終わった?という感じでした。 あとから思い返すと、いくつかのエピソードがそれぞれ真相のスジの肉付けになっていることに気づきます。 さらに、次作への伏線かと思わせるものもあるように思います。 実は、この本を買った直後に、古本屋で次の本を見つけたのです。次が気になる~。 ここでは、ホンスジの方は触れないことにして。 この本は、とにかく古書の知識がいっぱい詰まっています。 今回は違いますが、なるべく古本で安く読もうとしている身としては、興味津々です。 古書を、儲けの対象物として見る人にとっては、売れる本イコール価値のあるものであり、高値が付くことになります。 で、売り出された当初はそれほど話題にもならなかったものが、数年経ってからとか、あるいは著者が亡くなった後に、大化けすることもあるから、目先が利く人は安いうちに初版本を買って、大事に仕舞いこんでおく、とか、 同じ作品でも、状態のいいもの(特に誰も手を触れた形跡のないもの)に価値があり、初版本がよい。 …とか、そういう目で、いいものに投資して、儲けようという人たちがいっぱい出てきます。 そういう人たちから見ると、ホントは高い値段がつく本なのにそれに気づかず二束三文で売ってしまう人は、間抜けに見えるわけですが、そういう価値観がずっと書かれているのを読んでいると、読む側としては、モヤモヤと気分が鬱積してきます。 本の価値は、結局は外見より中身じゃないの?と。 内容のない本は、いくらきれいでも駄本だし、読んで得るものが大きければ、見てくれが悪くてもその読者にとってはかけがえのない本になるわけだし。 って思っていたら、そういう素晴らしい読書をこよなく愛する人たちも登場し、主人公も古書店を開くときに自分がいいと思うものだけを扱おうという方針を立てます。 ここで、だよね!と、気分が晴れました。 ま、内容が悪いといっても、その価値観は読む人によって様々。 作者は、人は大きく、ベストセラーを読む人と、読まない人の二つに分けられる、てなことを書いています。ちなみに、私は後者です。。 世の中でいくら、今はこれが売れてます流行ってます、ドラマ化され映画化されマンガにもなりました、と言われても、私にはモヒトツ面白そうに感じられないことが多く、いつも人とずれたものを読んでいるような。 「そんなにいうんだったら、読んでみんとあかんかなあ~」と、思わされてしまうこともありますが、この本を読んで、やっぱり自分の価値観で読もう、と思いました。 他人が書いた有名な作品について、バッサバッサ言いたいことを言っているのも、面白かったです。 とにかく売れる作家としては、スティーヴン・キングがすごいらしい。 「ミザリー」はとても面白かった。が、その作者が書いたとはとても思えないような駄作もある、とか。 クーンツは、(スティーヴン)キングならぬ小君主(キング)で、犬が言葉をしゃべるなどありえん妄想が書かれている、とか(ウォッチャーズは面白かったけど…)。 グラフトンは、主人公にイマイチ活気がない?だったかな、これには納得。 それにしても、他人の作品にこうもバッサリ言いたいことを言ってしまうと、自分の作品が書きにくかろうに、肝が据わってるなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.11.02 13:31:53
コメント(0) | コメントを書く |