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カテゴリ:読書
「幻の特装本」(ジョン・ダニング)を読みました。
今回の話は、本の著者やその作品ではなく、活字や印刷や装丁の世界が描かれています。 前作よりよかったと思いました。 ま、解説によると、作者は安易なシリーズ化が嫌いだということですが。 また解説によると、作者はインタビューで、このシリーズで描きたかったのは単に貴重な本を探す話を超えた悲劇であり、本の世界にある一般人の知らない側面を読み取ってもらいたい、というようなことを語っているとか。 本の世界の悲劇的な側面とは、何だろう。 私がこの作品を読みながら感じたことを挙げると。 まず、古書の世界で、いくら本の値打ちが上がっても、その本を作った人間には全くお金が入らない、ということ。 だから、職人としていいものを作ることを極めようとすると、経済的に苦しくなる、ということ。 また、完璧な作品を遺すことに異常にこだわることの、悲劇。 そして、いい作品の評価と、市場価値とは一致しない、ということ。 こんなに簡単な言葉でまとめてしまうのは乱暴ですが。。こういったことが、描かれているんではないかなと思いました。 ただ、こういったことは、本の世界に限らず、ものを創造する分野に共通することではないかと思います。 自分が生きているうちの評価は自分で何とかしようがありますが、死後はどんなにあの世でもがいても何ともしようがありません。 結局、この作者は本の世界を描くことを通じて、すべての価値を金銭によって決めようとする今の風潮を、批判的に描いているのではないかと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010.12.03 18:50:37
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