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カテゴリ:読書
木曜の夜から、また例の神経の痛みが、今度は肋骨あたりに起こっています。
それほどひどくはないんですが、いつ痛みがやって来るかまったく予測不能で、いつもなら治まってもよい頃なのに治らないので…ダラダラ本を読んでます。 こういう時って、やんなきゃいけないことよりやりたいことで気を紛らわせたくなるんだもーん。 いつでも読みたいと思った時に読む本が手元にあるっていうのは、幸せだな。 というわけで、「死者との誓い」(ローレンス・ブロック)を読みました。 マット・スガター・シリーズの11作目です。 このシリーズも古本で見つけるたびに買うので、順序をバラバラに読むことになってしまっています。 なので、前に読んだ14作目の「皆殺し」では妻になっているエレインとはまだ結婚しておらず、ジムは健在で、TJもマットの助手になるのを「目標」にしているという段階。特にTJは初々しくてかわいい。この子の生意気な物言いを読むと元気が出ます。 確か「皆殺し」を読んで、このシリーズには嫌気が差し、もう読むのをやめようと思いました。 が、この作品は評判がよかったので、読んでみたところ、正解でした。 なにがどうよかったかというのを説明するのは難しいのですが、あえて言葉にすれば、この世の不条理さがうまく描かれている、ということではないかと思います。 これまでに読んだこのシリーズの作品でも、きれいごとではなくどうにもならない醜い現状をそのまま描いてみせる、といった印象がありましたが、前回読んだ「皆殺し」は私には暴力的な部分にどういう意味があるのか、話の全体の意味が理解できませんでした。 が、今回は読み終わって、まったくね、どうにもならないことってあるよねと思いながらも、それでもしたたかに何とかやっていくもんだというような、救いのようなものを感じることが出来ました。 だいたいの探偵モノでは、犯人が捕まって逮捕されるとか、行方不明の人が見つかるとか、社会の巨悪が暴かれたりするものですが、 マットが引き受けた探偵仕事を誠実にこなしても、事件の全容が完全に明らかになることはなく、死者の名誉は回復されず、正義が勝つわけもなく、世の中がよくなるわけでもありません。 そういう意味では中途半端で、後味もすっきりしませんが、現実の探偵仕事というのは(そういうものが本当にあったとして)こういうものなんだろうと思います。 不条理だけれども現実はこういうものだ、というものはこの作品の中でほかにも様々に描かれています。 たとえば、事件の被害者について調べていくと、贅沢な高層コンドミニアムに住む弁護士という順風満帆なイメージからはかけ離れた生い立ちや過去が明らかになります。 また、容疑者のホームレスの男は実際には犯人ではなかったのですが、彼には実は住まいがあり、心配する兄弟がいて、拘置所のいさかいで殺されてしまった後の簡素な葬儀には、思いのほか人が集まります。 弁護士の意外な過去が明らかになるにつれ、自らの行為により自業自得で殺されたのではと思われてくるのですが、結局事の真相は、弁護士は人違いによって殺されたことが分かるというのがまた、単純にいい人・悪い人と割り切れなくて、そこがまた何とも複雑でリアルな感じがして、まったくね…とやりきれない気持ちにもなりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.01.09 16:52:22
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