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カテゴリ:読書
しばらく前から、チビチビと読んでいる本があるのですが、なかなか読み進めず苦痛になってきて、ここらで軽いものを読みしたくなりました。
そしたら古本屋でうってつけのものを発見。 それは「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」(北尾トロ)。 この著者の本を読むのは初めてです。こういう人がいることも初めて知りました。 こういう人というのは、「傍聴マニア」ということではなく、一つの雑誌に継続して企画モノを連載するライターという仕事をしている人、という意味です。 著者はその雑誌の企画の一つとして、裁判を傍聴してみる、という体験をして、そこで見たり聞いたり思ったりしたことを連載し、それらをまとめたのがこの本。 タイトルの「どうすか」が中身の空気感を見事に表していて、大多数の人と同じように、裁判所に一度も足を運んだこともがなく、事件や事故に巻き込まれて当事者になったこともないシロウトが、裁判って傍聴できるんだよね、傍聴マニアっていう人までいるって聞くよな、どんなものか見てみよっか、という興味本位のノリで、恐る恐る足を踏み入れる…というスタンスで始まります。 読み終わった後、すでに読んだ人の感想をネットで見ると、この軽く興味本位な姿勢に反感を持った人が多いと知り、私は意外に思いました。 そうなのか、毎日次から次にとんでもない出来事が起こってそれらの情報に触れるけど、そういうのはみんな嫌いなのか、みんな善良で温かい心の持ち主なんだなと…、正直そんな風には思えませんでした。 息苦しい世の中だなあ。 私はこの著者のスタンスに、特に反感は抱きませんでした。 シロウトの一般大衆が素朴に感じることが、あからさまに書いてあって、面白いと思いました。 といって、決して著者の感想のすべてに共感したわけではないけど。 いろんな事件の裁判の傍聴記の中で、特に印象に残ったのは、音羽幼児殺人事件の被告人について描かれているところでした。 最後に何か言うことがありますかと促されて、ございますと答えてから、用意してきた原稿を長々と読み上げたこと。 その、すべての方向に気を配ったような発言、言いたいことを理路整然と話し続ける様子。 それらは、地味でおとなしく善良そうな外見もあり、何も問題なさそうに見えるのですが、それこそが異常だと。 自分が殺人者として裁判に掛けられていれば、山ほどいいたいことがあってもほとんどうまく言えず、もどかしく、みっともないものであるはずなのに、最後までいい人に見られたかったのかと、佐木隆三が記事に書いていた、という。 そういう人間性の見極めを、毎日やっている裁判官って、すごいなあと思いました。 もしこの著者が、仕事の企画のためではなく、特定の事件に興味を持って、あるいは傍聴マニアとして、裁判所に足を運んでいたら、もっと面白いものになっていたのではないか、と思いました。 今は裁判員制度も始まっており、また検察への視線が厳しくなっているご時勢で、また違った緊張感のある雰囲気なのだろうか…と思ったりしました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.02.20 18:54:27
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