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カテゴリ:読書
「罪人のおののき」(ルース・レンデル)を読みました。
この人の作品を読むのは、「友は永遠(とわ)に」に続き2冊目です。 今回も古本屋で偶然見つけました。 …なんて言っても正直なところ、1年前に読んだ本の印象が余りありません。 どんな感じだったかな?と、この日記を振り返ってみると、今回読んで感じたことがそのまま書いてあり、自分でも驚きました。 その一つは、事件の真相についての説明が物足りないということ。 今回は、小説が始まってすぐに、大きな屋敷に住む夫人のエリザベスが撲殺されます。 犯人は誰か?と、ウェクスフォード警部とバーデン警部が捜査し、あれこれ推理する様子を読んでいくのですが、 結局どういうことだったのかという説明は、ある人物の手紙による告白という形で、最後に畳み掛けるように語られて、あっさりオシマイ。 その内容が、それまで読んでいても推察できることではないので、そんなこともあったのか、ってそんなこと分かるか!という気にさせられるのです。 推理小説で、この事の真相を明らかにする部分っていうのは、私はとっても大事だと思っています。 ここを、いかに自然にするか、しゃれた構成にするかが、とっても重要なのに。 ま、でも少し前のお話なので。 なにしろ、血液型について、非常に珍しいAB型マイナス、で済ませてしまうという時代ですから。 こないだ松本清張を読んでた母が、「今読んだらセクハラだらけ」と言ってました。 時代によって、価値観や物事の評価は変わるものなので、この頃のミステリ小説はこんなカンジだったんだな、と思って読むべきなのでしょう。 この人の作品を読んで感じたことの二つめは、情景の描写が詩的でロマンチックであるということ。 今回は特に、ワーズワス(ワーズワース)がモチーフに使われています。 私は、彼が詩人であることぐらいしか知らないのですが、始終引用が出てきます。 ほかにも、文学作品の引用がしょっちゅう出てきて、正直付いていけないところもあったりしました。 しかし、一度読んでよく意味が分からなくても、最後まで読んでから改めて初めの部分を読んでみると、なるほどそういうことかと分かるところがあります。 たとえば、エリザベスの弟は、彼女の夫へ献辞を書いているふりをして、じつは姉へ、ワーズワスの言葉を借りて呼びかけています。 何気ないため息や、ひと時の物思いも、後で読み返すとその意味が見えてきます。 複雑な人間の心理が的確に描かれ、人物描写に優れています。 推理小説としては少し物足りなさがありますが、非常に洗練された小説です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.04.12 23:54:51
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