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カテゴリ:読書
「自閉症だったわたしへ(3)」(ドナ・ウィリアムズ)を読みました。
「ドナの結婚」として出版された作品の文庫版です。 個人的には、原作に「LIKE COLOR TO THE BLIND」とあるように、これまで見ているつもりで見えていなかった、視覚の問題について書かれているところが、興味深かったです。 きっかけは、著者が以前から、蛍光灯の下にいると調子が悪くなったこと。 そういう体質の人がいるということを知り、暗所過敏症候群、SSS(スコトピック・センシティヴィティ・シンドローム)というものがあることを知る。(ネットで見ると、これはアーレン・シンドロームと呼ばれることもあるようです。) この障害のある人に見られる症状のうち、著者は、エスカレーターで空足を踏んだり、踏み外したりするという記述に思い当たることがあった。 そして、アーレン社製の色つきレンズを試してみると、それは様々な色のフィルターを組み合わせたレンズなのだが、ピッタリあったフィルターの組み合わせになると、突然周囲の何もかもが完全に変貌。 庭を見ると、これまでのように木から木へ目を移さなくても一気に庭全体のすべてが見えるようになり、「世界全部が見える」ように。 本を見ると一文字一文字の線を空中でなぞることなく、文章を読むことが出来る。しかも意味が分かる。頭の中に場面が浮かぶ。 夫となるイアンの顔を見ると、目・鼻・口・あごが一つにつながり、そこから首・肩・胴体・足へと繋がっている。はじめてイアンの全身を見た。 イアンも同様にこれまでの見え方から一変し、「生まれて初めて目があいたみたいな気分です」。 そして、視覚がうまく機能することによって、聴覚や周囲に対する感覚なども、バラバラだったこれまでとは一転して一体感を持って実感できるように。 また、これまでかけていた近視用のめがねも不要に。 問題があったのは目ではなくて脳だったのだと、著者は気づくのです。。 このような障害は、光の波長の刺激に、その人の神経の機能がうまく付いていけなかったり、逆に過剰に反応してしまうことによって起こるそうです。 その人によって、どの色の波長にうまく付いていけないか、あるいは過剰に反応するかをテストして、その色の刺激を和らげたり逆に補ったりして、うまく見えるように調節するレンズがアーレン社製のレンズなのだそうです。 私にはこういう症状はありませんが、自分の見ている「見え方」というものに、どういうものが関わっているのかを知ることが出来て、とても興味深く思いました。 確かに、光によって波長が違うことや、それによって脳に刺激が伝わる早さも違うことなどを学校で習いましたが、そういう刺激を受け取る神経の機能に問題があることによって、見え方が違ってくるということには気づきませんでした。ものの見え方に対する理解が深まった気がします。 またほかに、栄養について書かれているところも、とても興味深いものでした。 清涼飲料水やチョコレート、ビスケットなどの甘いものを摂りすぎる習慣による低血糖によって、気分がそう状態になったり不安定になったりすること、化学調味料(グルタミン酸ソーダ)をやめると、感情や「自己」から切り離される感覚(自閉症の人がよく陥る感覚)が少なくなったこと。 また、マルチビタミンやミネラルの錠剤をたくさん飲むと、不安感が和らいだこと。ビタミンCの不足が解消されると、歯茎の出血や内出血が治り、亜鉛を補うと爪の斑点が消えたことなど、これらの記述は、以前読んだ、生田哲の本に書かれていた内容と一致しました。 そして、DMG(ジメチルグリシン)の錠剤を飲むようになると、これまでの症状が安定し、「幸せの薬」だと感じたとのこと。 このDMGこそ、私がエクセグランをやめる方法を考えたときに、一時、代わりに飲もうかと考えていたものでした。 ただ、DMGを経口摂取しても、腸でほかのアミノ酸に変化してしまい、グリシンのまま脳に届くことはないので効果はないとされているという記述を見て、やめたのです。 アミノ酸が自分の体の中で、どの物質に変化するかは、酵素やその働きを助けるビタミンがどう働くかで違ってくるようなので、良かれと思って摂っても逆の作用が増すおそれもあると思い、様々なビタミンを多めに摂り、特にビタミンB群を複合でとることにしたのです。 ドナとイアンが、世の中の見え方のあまりの変わり様にショックを受け、今までの人生で失ってきたものの大きさに愕然とするところは、私にも幾らか分かるような気がしました。 私は1作目を読んだ時に、「ここまで赤裸々に書いてしまって、家族との関係は大丈夫なのだろうか?」と心配になっていました。 また当人にとっても、人前に出る機会が多くなるのも大変だし、プライバシーが犠牲になっても大丈夫なのだろうかとも。 この3作目の始めの方では、1作目を読んだ世界中の様々な人々から、毎日たくさんの手紙などが送られてきて、それらに返事を書くと、またさらにその返事が来て…と続くとしたあとで、わたしは「歩く自閉症の教科書」なのか、と書いてあるのには笑ってしまいました。 また最後の方では、家族(母親以外)との関係が、ゆっくり少しずつ改善されていく様子が書かれていて、人はそれぞれのスピードで成長していけるのだなとホッとしました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.06.04 23:02:10
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