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カテゴリ:読書
別に古い本ばかり選んで読んでいるわけではなく、本屋で平積みになっているものを手に取ってみたりもするのですが、振られることが多くて。
少し前には、阪急電車の3行目で挫折し、古本で見つけた夜は短し歩けよ乙女も2~3ページでボツ。 新聞の土曜版の人生相談の回答者としてたまに出てくる、車谷長吉の私小説も読み出してすぐに、「人間の一生を七十年として計算して見ると、人の一生は二万六千日であり、人は一日一冊本を読んでも、一生掛かって二万六千冊しか読めないのだった。」という文章に出くわして、じゃあこんなもの読んでる暇はないと、放り出したり。 で、結局、「興奮」(ディック・フランシス)を読みました。またハマるシリーズものに出合ってしまいました。 この人の競馬シリーズというのが面白いらしいということは、以前から聞いていたのですが、何せシリーズの作品数が多いので、ハマッたら大変と、手を出しかねていました。 でも、暑さで行動範囲が狭まり、ツマンナイ気持ちになっていたときにこの本のタイトルを見て、つい出来心で手を出して読んでみたら、やっぱり面白い!! 私は競馬についてほとんど何も知らないのですが、そんなことは関係なく楽しめます。舞台は競馬界ですが、描かれていることは、誇りや自尊心という、どの世界にも共通する普遍的なことだからです。 服装や、ひげ、髪型など、外見を変えるだけで、人々の自分に対する評価がガラリと変わり、油断なく警戒され、見下されて扱われることを、強く意識する日々。 また、劣悪な環境に置かれ、ひどい扱いを受け続けながら、自分を見失わずにい続けることの難しさを実感させられる。 そのように自尊心を傷つけられることは、肉体的に痛みつけられるよりも堪えるが、ひと通り困難な状況を乗り越えた後気がついてみると、そんなことはなんでもないと笑えるようになっていた。 という主人公の心の移り変わりの描き方に、とても説得力がありました。 作者自身の濃い~人生経験の中で味わってものだからこそ、自信を持って描けるものであるように思いました。 ハードボイルド、主人公のストイックさ、全体を流れる健全な精神など、ミステリー小説(探偵モノ)の面白みがバランスよく詰まっていて、よく分かっているな~とうれしく感じました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.07.10 16:28:00
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