|
カテゴリ:読書
「オペラ座の怪人」(ガストン・ルルー/三輪秀彦訳)を読みました。
ミュージカルや映画など、いつも何かで扱われている、ずっと現在進行形のような印象があります。 この本の表紙にも「劇団四季公演」と書いてありますが、この80年代のミュージカルと今やっているものは、また違うようです。 私はミュージカルも映画も観たことがなく、ただ古本屋で見かけて、100円なら読んでみっかと手に取りました。 なにしろ1世紀も前に書かれた小説なので、古めかしいだけでなく、会話文や人物・風景の描写の表現力が乏しいというか掘り下げ方が足りないというか、深みがあまりなくて読み手として感情移入しにくいところがあります。 しかし、「オペラ座」とか「怪人」などという言葉から想像していたほど、厳めしい内容ではなく、ユーモアがあり、楽しませる工夫がたくさんあって、一気に読める面白さでした。 私はファンタジーとかSFとか、ありもしない世界を描いた小説を読むのは苦手で、この話も大のおとなが幽霊の存在をまじめに受け取るなんて、ばかばかしくて話に入り込んで読む気になれないよ~と思いながら読みすすめました。 が、結局最後には、幽霊の仕業と思われた様々な現象には種明かしがあり、幽霊のように振舞う人物についても説明があって、納得できました。 この、みんなに幽霊と考えられた人物の設定が、これまで何度も作られてきた映画やミュージカルではそれぞれ異なっているようです。 本書のあとがきでも、いくつか紹介されており、また読んだ後にネットでもチラッと見てみたのですが、私は原作が一番自然でいいと思いました、ま、最初にこのストーリーで読んだからかもしれませんが。 しかし、幽霊っていったいどういうことなのか、という説明が、物語の最後にならないとはっきり分からないので、読んでいるあいだ中この人物はずっと外観も行動も恐ろしいということしか分からず、悪役の怪獣のようなキャラクターとしての扱いになってしまっているのが、残念に思います。 ただ全体を通しての幽霊の描き方のそっけなさは、最後にその人物について説明されてすぐに話が終わってしまった後、すべてを読み終えたときの余韻というものに、活きているようにも感じました。 小説はミュージカルや映画と違い、また始めに戻って読み直して味わうことができるからです。 今の時代の、洗練された小説にはかないませんが、これもやはり、最初にこんな奇想天外なアイデアを創造した、オリジナルであり源泉であることに、古典としての価値があるのだろうと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.08.06 18:12:13
コメント(0) | コメントを書く |