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カテゴリ:読書
面白そうな本ほど、なかなか文庫化されないもの。
この本も、読みたいと思って探すたび、何度もあ~まだか~とがっかりさせられました。 そのうち、諦めて探すこともやめてしまい、このタイトルが頭から抜け落ちてしまっていましたが、先日母が買ってきて、「これって面白いの?」と見せてきました。ああ、それっ!早く読んでっ。 と急かして、昨日やっと順番が来たので、さっそく「ミーナの行進」(小川洋子)を読みました。 読み終わるのがもったいないという気持ちになりながら、読むのをやめられずあっという間に読み終えてしまいました。 かわいらしくて、あたたかいお話でした。 登場人物が皆優しく、思いやりがあり、読みながら、こういう、人から大切にされたり、信頼されたりする思い出が、人間にとって大切なんだなと思いました。 主人公は父親を亡くし、母親とは1年間離れていとこの家で暮らせねばならず、 そのいとこの家庭では、伯父さんは別に家庭を持ちしょっちゅう家を空けたままにし、伯母さんはヘビースモーカーで酒びたりで、いとこ自身は虚弱体質で喘息の発作でしょっちゅう入院したりします。 設定は結構シビアなのに、全然すさんだ感じがなく、ふわふわとしたやさしさに包まれています。 それでいて、しっかり現実が冷静に描かれてもいます。 最近は、信じられないことが次々に起こり、それを追いかけ追い越すように突飛で荒んだ出来事を次々に描くような小説が多い中で、こういう描き方や見せ方もあるんだなあと新鮮に思いました。 一番印象に残った場面は…。 特別の記念日に、ホテルのコックたちがやってきて作ったご馳走を家族みんなで食べた後、おばあさんとお手伝いさんの同い年のコンビが仲良く歌を歌い、皆が拍手をして、給仕をしてくれたボーイさんたちも拍手をして、にぎやかにしている部屋の中の様子を、庭で飼っているコビトカバの「ポチ子」がガラスに鼻を押し当てて見物していた、というところ。 家族の誰もが、それぞれを大事に思っていて、この人はこんなことが好きな人、こんなことが上手、こういうところが素敵と、その存在を尊重している。 そんな家で飼われているポチ子は、いつも安心しきって人間の様子にイチイチ動じずいつもマイペースで好き勝手やっているのだけれど、そのポチ子までもが、おおっ?と覗きにいきたくなるような、あたたかく楽しそうな家の中の様子。 でも、ホテルのコックたちを呼んできて、そんな粋な舞台設定を整えた伯父さんは、長らく別の家の方にいて家に帰ってきたのはその日でひと月ぶり。。 現実ってこんなもんかもなあ。 ドラマみたいに(って私は見ないけど)ギャーギャー騒いだりせず、いってはならないことは誰も口にしないで、何でもないように何でもなくないことが進行しながらも、穏やかに過ぎていくのが日常ってものかも。 みんななんだかんだ問題がありながらも、それでもみんな大切に思っていて。絵に描いたような幸せなんてないよなあ、心持ち次第なんだなあ。。 てなことを考えました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.08.06 18:12:54
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