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カテゴリ:読書
「聖なる酒場の挽歌」(ローレンス・ブロック)を読みました。
「八百万の死にざま」の次に書かれた作品です。 が、時間的に八百万の死にざまより前の設定になっています。つまり、呑んべえ時代ということ。 毎日そこら中の店をハシゴして、飲み仲間たちとの親交をあたためる日々。 その仲間から調べものの探偵仕事を頼まれて…なんじゃかんじゃ、というような話。 こういう話は、無尽蔵に作り続けられるんじゃないかと、シロウトには思えてしまいますが、訳者のあとがきによると、この作品を書いた時点ではローレンス・ブロックはもうこれ以上このスガター・シリーズは書かないつもりだったようです。正確には、書かないと思うけど、でも書くかも、ってな心境だったみたいですが。 飲まないスガターの活躍を想像することは、この時点では考えられないことだったのでしょう。 その後のスガターの変貌や活躍ぶりを考えると、面白いなあと思いました。 久しぶりにこのシリーズの小説を読むと、なんって俗っぽいんだっ!と思わずにいられません。 ま、実際にこういうものにまみれた日々を送っている人がこんなものを読んでも面白くなく、別世界で読んでいるからいいんだろうけど。 「聖なる酒場の挽歌」という歌があるんだよ、という酒飲みの友人にレコードを聞かせてもらって、二人でいいね~とひたるのですが、酒の仲間と別れて孤独になる前に最後の杯を交わそうとか、お酒を飲まないとやってられないとか、ふらふらになって帰るとか、そんなことを歌っているのを聞いて、じいんと感傷に浸るなんて、古いっ! 俗っぽい上に、その俗っぽさを酒の世界で描こうとすることが、今の時代から見ると古いっ(と思いたい)。 やっぱり、アル中を自覚して酒を断ち、堂々と飲み屋に出かけて行って、やせ我慢でなくスマートに酒の誘いを断るスガターのキャラクターこそ、今の時代に合っていて、カッチョイイ。 時代によって価値観が変化するのに合わせて、ヒーロー像というのも変わるんだなあと思うと同時に、ローレンス・ブロックはそれをうまくやって、テダレだなあと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.08.17 18:06:03
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