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カテゴリ:読書
「文学的商品学」(斉藤美奈子)を読みました。
時々新聞に載る文章がとっても魅力的なので、いつかこの人の本を読んでみたいと思っていました。 そして古本でこれを見つけて早速読んでみたのですが、これはちょっと実力を十分発揮し切れていないような。 小説の中に出てくる、さまざまなモノに焦点を当てて、そのモノの描かれ方を見てみよう、という趣旨。 ただ、特に第1章と第2章あたりの文章は、ムリヤリ講義風を気取っているカンジで、内容は面白系なのに高いところから言われているみたいで、何だか上野千鶴子ちっくな文章で気分が悪くなりました。 きっと、はじめの頃はこの企画にピッタリの形式にこだわりすぎたというか、気を取られすぎていたのかも。 でもだんだん、「でしょー」とか、関西弁をつかったりとか、「てな感じで」など、軽~いタッチになって、まるでこの私の落書みたいな文章に。。 それが私にはしっくり来て、後半から面白さが増して感じられました。 第3章は「広告代理店式カタログ小説」。 森瑤子や林真理子などがきれいなカラー写真の塊のような分厚い女性誌に連載する、モノをキーワードにした連作小説について語られています。 こういうの、あったあった。ていうか自分が目にしなくなっただけで今もあるんだけど。 あの毎月出る電話帳みたいに分厚い広告の塊。 あれを鵜呑みにしたことはなかったけど、時々本屋で立ち読みをして、こんな世界があるんだなあと感心して見たりしていました。 この著者が言うとおり、なぜか、お花とか着物とか香水が多かったなあ。 そういう、商品のイメージとか物語を消費者に植え付ける文章というのは、世の中にたくさんありますが、しかし最近は消費者の方もひねてきたというかうぶではなくなったというか、バブルの頃のようにはそういう文章に感化されなくなったのではないかと、思うというか思いたいところです。 いや、近頃の方がかえって、無批判に丸呑みしてしまう風潮があるかも。 こういう、モノの宣伝的な要素がない普通の小説を読んでいても、ある程度作者の価値観の影響を受けることになり、そこに登場するモノに対し、特定のイメージを持ってしまうことはあるなあ、なんてことも思いました。 最後の第9章では、「平成不況下の貧乏小説」とあり、昔のみんな貧乏だった時代ではなく、モノがあふれる大量消費社会の今にあって貧乏であること、について書かれてて、これがそのほかの章とうまく対比して全体がうまくまとめられていると思いました。 とにかく、この本には、かねがねなんとなく思っていたことがズバッと書いてあって、やっぱりそうだよね!と思うことがいっぱいありました。 たくさんの小説から文章が引用してある中で、ダントツに一番だと思ったのは、町田康の「夫婦茶碗」。 一度読んだのに、ほんの一部分だけなのに、何度もふき出しました。 それから、読んでみたいと思ったのは、浅田次郎の「プリズンホテル」シリーズと、芦原すなおの「青春デンデケデケデケ」。 浅田次郎の路線は大概読めた、もう飽きたと思っていましたが、漫画みたいに軽くていいかもしんない。 こうやって、あれを読めば次にこれが読みたくなる…と、芋づる式に読みたい本が増えていく。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.10.19 17:26:27
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