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のんびり幸兵衛夢日記

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2011.10.21
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カテゴリ:読書
ゴメスの名はゴメス」(結城昌治)を読みました。
いつどこでだか忘れたけど、これは名作だと聞いたようなぼんやりとした記憶があり、古本で買って、日本人の作家のものしか読まない母に先に貸したところ、よかったっ!ということだったので、楽しみにして読みました。
でも私にはその良さがあんまり分かんなかった。。え~ん。

後ろの説明文によると、「熾烈なスパイ戦を通じて、不安な現代を浮き彫りにした迫真のサスペンス。日本のスパイ小説の金字塔」ということなんですが、これはスパイ小説なのか?
といっても、どんな条件を備えていたらスパイ小説なのかが分かるほど、そういうものを読んでもいないんですが。

スパイ小説ときいてすぐ思い浮かぶ名前に、ジョン・ル・カレがありますが、今年読んだ彼の小説「ナイロビの蜂」では、東西とか右左といった分かりやすい対立ではないものの、経済格差や、資本主義の世界での節操のない功利主義と倫理との対立など、対立する双方の実体や問題が分かりやすく描かれていて、読み応えがありました。

それに比べると、この作品では、主人公・坂本は会社の命令でベトナムに赴任し、何だか知らないうちに後をつけられていたり自分と間違えて人が殺されてしまったりして、そのうち手紙を届けるよう頼まれ気がつけばスパイの手先として手を貸してしまって…と、ベトナムで当時進行しつつある対立と混乱という状況に対しては他人事として巻き込まれていて、さして政治的な問題に関心をもってもいません。
え、あんたスパイなの?じゃ、私もスパイになっちゃってんの?あれ、あんたもしかして二重スパイじゃない?てなかんじで。
スパイという言葉はいっぱい出てくるけど、スパイ小説っていうのとはちょっと違う気がしました。

うしろの解説を読むと、ミステリー小説を集めた本を作る企画で、当時日本にスパイ小説というものがなかったので新しい分野を作り出すべく、作者に要望して書かれたのがこの作品だったとのこと。
さらに、日本のこれまでの歴史的経緯からスパイ小説というものが成り立つ余地がなかったとの記述に、なるほどだからこんなカンジなんだなと納得しました。
日本の小説といっても、舞台を外国にして、主人公の日本人は横から他人事として事態を覗き込むという構図。

それならそれで、もっと現地のベトナム人と主人公の日本人との交流を密にして心情的に入り込むような状況を作れば、当事者の立場ではなくても、ベトナムやベトナム人の抱えていた困難な状況がもっと分かりやすく描けたのではないかという気がしますが、主人公はベトナム人に対し当時の偏見からいいイメージを持っておらず、見くびったような態度に終始している様子を描いているため、ベトナムの状況の説明も、会話文の中で誰かが一方的にしゃべったり、地の文で説明することに終始しています。

また、そういう時代だったといえばそれまでなんですが、チョロチョロと出てくる女性がことごとく飾りだけの役割で、彩りのつもりなのかもしれませんが、面白さが余計薄まるというか、何に主眼を置いた作品なのか、わけがわからなくなるような逆効果しか感じられず、残念でした。
ちょうどこないだ読んだ斉藤美奈子の本に、車と女性はセットで出てくるとか、バンドを描く作品の標準的なパターンは魅力的な女性ボーカルと標準語とかなんとかバッサリ斬ってあったのを思い出し、おかしかったです。

ま、やっぱり時代、ということなんだろうな。

そういう、はあ?という感覚はありましたが、当時のベトナムの状況について、アメリカの作品ではなく日本人が書いた作品であり、しかもベトナムの中からの世界が描かれているので、その重苦しい空気感や疑心暗鬼になりながらも表面上は平穏に過ぎる都市の日常などが、よく伝わってきました。





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最終更新日  2011.10.21 18:30:14
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