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カテゴリ:読書
「証拠」(ディック・フランシス)を読みました。
競馬シリーズの23作目です。 今回の主人公はワイン商。 祖父は第1次大戦で勲章を受け、父は競馬で活躍し最後は大障害レースで首の骨を折って亡くなっており、どちらも勇敢な人物だったが、自分にはそのような勇気がないということを、始終気にしている。 ただ子供の頃からチョコレートの味を見て銘柄を当てられるという特技があったものの、そんなものは何にも役に立たないと思っていたが、ワインの利き酒の能力があることに気づき、初めて興味のある世界に行き着き、ワインやウィスキーなどを売る小さな店を持つようになる。 フランシスが書く主人公はいつも、勇敢で忍耐強く抑制が効いて健全な思考の持ち主で、とにかく優秀な人物。 マンネリ脱却を狙ってなのかどうか分かりませんが、今回はいつもとはちょっと違う人物を描こうと、してみたようです。 けど、下手っぴだな。笑っちゃう。 臆病だったり弱い部分を描くときは、くだくだ理屈っぽい説明が長く続いて、でも結局、いつもの主人公に似たような人物像になってきちゃう。 人間の弱い部分を描くことは、難しいことなんだなあと思いました。 それに対して、この作者が一番上手なのは、馬の描写。 今回は特に、舞台のひとつに競馬場が出てくることはあるものの、物語そのものに馬が出てくるわけではなく、記述は少ないのですが、土の匂いやいきものの息遣い、馬の邪心のない性格などが、少ない言葉で簡潔に、生き生きと描かれています。 シリーズを何冊か読んでいると、作者自身のことがなんとなく分かってくるような気がして、親近感を感じます。 今回は、いまどきはこんな時代だけども私はこんな考えでいたいと思っているんだ、というようなことを登場人物に言わせているところが目に付き、ちょっと年を感じさせられました。 それにしても、私はもうお酒の味なんかとんと忘れてしまいましたが、ワインやウィスキーって、こんなに深い世界なのか~と驚きました。 分かっているような顔して飲んでても、分かってる人なんてほとんどいないんだな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.11.15 13:05:36
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