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カテゴリ:読書
「グレイヴディッガー」(高野和明)を読みました。
「13階段」を気に入った母が読みたいだろうと古本で見つけて買ったもの。 先に読んだ母の評は、「ゲームが好きな今どきの子だったら、はまりそう」。 確かに、次々現れる追っ手をあの手この手でかわして逃げるというストーリーは、画面でピコピコやるのに似ていなくもないかな。 これまでいくつも悪いことをしてきた八神は、生まれ変わりたいと骨髄ドナーになり骨髄移植をすることになったのだが、連続殺人事件に巻き込まれ自らの命を狙われて逃げなければならなくなり、しかも警察からは犯人と見られて追いかけられるはめに。 骨髄を待つ患者のために逃げなければ…。ハラハラドキドキ。。ってことなんですが。 んん~~。どうなんだこの設定。 声色詐欺とか、他人の健康保険証を偽造してサラ金を引き出すとか、タレントオーディションと偽り女子高生たちを集めてお金を巻き上げるとかいった、後ろめたい過去がなければ、とっとと警察に助けを求めるところなのだが…という設定。 少し前に読んだ「迅雷」(黒川博行)でヤクザは素人に脅されても警察に言わない、という前提の話でも思ったんですが、そんなことはないのでは。と思うのは、甘いのかなあ。 この八神という主人公が骨髄ドナーになろうと思ったのは、女子高生からお金を巻き上げた後に後悔して、善行をしたくなったからということなのですが、自分の中では善行をすればこれまでの悪行のみそぎが出来ると思うのだろうけど、世の中的にはそんなのは言い訳にもならず、法律的には時効になるまでは逮捕され裁かれる可能性があることに変わりはないはず。 ってことは、危機に瀕しても警察に助けを求めず逃げ回るのと、骨髄ドナーとなっていいことをして自分は生まれ変わるのだと思うのとは、一人の人物の中で矛盾しているのでは。 まあいいけどさ。とにかく、作者としては読者に手に汗握って「逃げろ逃げろ」とハラハラして読んでもらいたいのだろうけど、え~この状況でも逃げなきゃあきませんかと思ってしまいました。 グレイヴディッガーという中世の伝説や、超法規的組織を作るために新興宗教を作って信者を操るという話など、複雑なことを創作して、ひとつの小説の中にうまく組み入れているところは、すごいと思います。よく考えられています。 でもやっぱり、ただ話のスジをリクツの上で合わせただけのような、ただチャカチャカと画面の上で駒が動いていくだけのような、心情的に実感が伴わない絵空事を読んでいるだけのような気がしました。 中世ヨーロッパの伝説を真似て、さまざまな拷問の方法を用いて人を次々と殺していく動機が、復讐ということなのですが、鉄仮面を被ったりマントを羽織ったりとそれらしく変装をして、火のついた矢を放ったり十字の傷をつけたりと伝説を真似ることで、復讐心は満たされるんだろうか? ま、でも、え~なんでやね~んと突っ込みながらも、読み出したらやめられず一気に読んでしまう面白さでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.12.11 09:34:26
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