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カテゴリ:読書
「罰金」(ディック・フランシス)を読みました。
競馬シリーズの8作目。70年代の作品。作者の若さを感じます。 今回の主人公は競馬新聞の記者タイローン。 他紙の記者仲間が「誰かに頼まれたら、引き受けるな」「自分の記事を金にするな、自分の魂を売るな」と忠告した直後にビルから転落死。 彼が記事の中で買いを大々的に薦めた馬が、直前に出走取消になるということが繰り返されていたのを知り、そこに不正行為があるのを感じたタイローンは、読者に買うのを慎重にするようにとの記事を書く。 出走直前の取消によって儲けていた賭け屋が動き出し、いつものように主人公は危険な目に。。 というような話。 これまでもこのシリーズを読んできている割りには、競馬のことがいまいち分かっていないので、どうもこの詐欺の手口がよく理解できていません。 国によってルールが違い、また今と昔では規則が変わってきているのかもしれませんが、当日でなく事前に買える期間があるレースだけを対象にして、大衆を大々的に煽って大金をはたかせておいて、ギリギリになって出走を取り消して儲けを得るというもののようです。 なんか分かるようで分からん、まあ別にこのシステムについてはそれほど深く掘り下げて書かれていないのでどうでもいいんですが。 タイローンの奥さんは小児麻痺で自力ではほとんど呼吸することもできません。 病院ではなく自宅に引き取り看護師(もどき)を雇って世話をしていますが、その奥さんを裏切って浮気もします。 これが面白いなと思いました。この作者には珍しい。 賢くて仕事ができて優秀で、病身の奥さんとも別れずやさしいという設定は、いつもの路線ですが、完全に抑制がきいているというのではないのが。 読了後に知ったのですが、作者自身の奥さんもこれほどひどくはないものの小児麻痺であり、その奥さんの死後毎年出していたこのシリーズがしばらく途絶えたのだそう。 それを知ると、「福祉国家は、全身機能喪失の妻に対しては、目をつぶって魚のような何食わぬ顔をしているので、必要欠くべかざるミセズ・ウッドワードの看護に対する支払いを税金から控除してもらうことすらできない。私たちにとって彼女は絶対に必要であり、彼女のおかげで私たちは貧乏している。」という文章にも、作者の深い思いを感じます。 主人公が憎たらしいほど完璧に抑制がきいた人物ではないだけに、説教くさくなく、気楽に読む楽しさを堪能できます。 悪者に無理やり大量に酒を飲まされ酔わされた状態でのアクションシーンは、ハラハラしながらも滑稽で笑えます。 悔しいことに2日ほど前から、母に風邪をうつされてグダグダで何もする気にならなかったのですが、これを読んでるうちに峠を越したようです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.02.18 18:41:40
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