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カテゴリ:読書
「マダム・タッソーがお待ちかね」(ピーター・ラヴゼイ)を読みました。
この人の本を読むといつも巻末の著作リストにこのタイトルが目に付き、お待ちかねって何を?どういう意味?と、気になっていました。 読みたい読みたいと思いながら機会がないままだったので、古本で見つけて飛びつきました。 いつもこの日記に「古本屋」としているのは、実際には「本屋の古本コーナー」なんですが、この本屋の古本コーナーの古本は、3日ほどの周期で商品が総入れ替えされて、その都度値段が変わります(いつも均一価格)。 100円均一の3日後には300円均一だったり、そのまた3日後は250円均一だったり。 で、最近気づいたのは、値段が高いほどつまらない本のときが多く、安い時ほど掘り出し物があるということ。 一時出版社が派手に宣伝して売れに売れても、買った多くの人が失望してすぐ書店から消えたというような本が、新しいだけに高い値段になり、逆に時代の風雪に耐えうる価値を持った良書が、安い値段で売られていたりするように思います。 ちなみに、この「マダム・タッソーがお待ちかね」は、100円でした。 なんといっても、この翻訳のタイトルが成功していると思いました。 原題は、ただ「WAXWORK」。 マダム・タッソー蝋人形館って、いったい何なんだろうと前から興味がありました。 最近ではウィリアム王子とキャサリン妃の人形で話題になりましたが、以前youtubeで、オジー・オズボーンがあの展示室で蝋人形のようにじっとしておいて見学の人が近づき覗き込むようにしたら「わっ」と驚かせるという、大人げないいたずらをしている映像を見たことがあります。 近頃はそういう芸能人の人形が多くなっていますが、この小説の舞台となる19世紀ヴィクトリア朝時代には、「戦慄の間」と呼ばれる、ギロチンとか恐ろしいものを再現した部屋が有名だったそうです。 当時のイギリスには絞首刑があって、絞首刑執行人なる職業があり、執行人が仕事を行うと人々はこの蝋人形館に殺到して、新しく追加された死刑囚の人形を見に行った、とか。。 つまり、マダム・タッソーが待っていたものというのは、絞首刑の執行。。 そんな、絞首刑がエンターテインメントになってしまうような世間の冷酷さを背景として、殺人犯とされた女性が果たして本当に犯人なのか?という疑問を解くべく時間と闘いながら調べまわるクリッブ部長刑事の活躍が描かれています。 もしかしたら、冤罪のまま絞首刑が執行されてしまうかもしれないというスリルで、読み出したら止まりません。 19世紀を舞台にしていますが、その女性をただ美しい被写体としてひたすら愛する写真師の夫とか、その写真師を取り合う女性三人の心理など、複雑な人の内面が描かれていて、古臭さを感じさせず、今の時代の出来事を描いたものを読んでいるようでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.07.07 09:35:40
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