カテゴリ:政治・経済
自民と民主の選挙のコマーシャルの明暗が完全に分かれちゃった感がある。
自民党は,小泉さんの「全国29万人の郵便局員の既得権を守っていて他にどんな大改革ができるのか!」といったセリフに代表されるように,メッセージが一つの絞られている。 いわば郵政民営化を改革のシンボルにしているわけだ。もちろん,郵政民営化だけで終わってもらってはたいへん困るのだが,それすらできなくて,他に何ができるかというメッセージには一定の説得力がある。 それに対して民主党のCMは失敗例の典型に位置付けても良いほどのデキある。 岡田さんの訴えかけている多種多様な声が間断なく流れ続ける。 それはとても,ざわざわとしていて,耳障りが悪い。 文字化すれば,その量は自民党のCMの数倍はあるだろう。 しかし,結果としてこちらには何も残らない。 自分が大学院生の頃の出来の悪いプレゼンテーションを思い出した。 言いたいことがたくさんあるので,つい自分が言いたいことをできる限り詰め込もうとしてしまうのである。 できるだけ多くの量を限られた時間に詰め込めるか。 そういった間違った方向性で,プレゼンテーションを準備していた。 その結果,プレゼンの練習のときに師匠に決まっていわれるのが,「言いたいことを詰め込みすぎて,肝心のメッセージが残らない」というものだった。 「気持ちはわかるけど,絞ることによって,印象深くなる」 言われてみると,まったくもってその通りなのである。 そう,民主党のCMは,大学院生の頃の自分が最初に作成した出来の悪いプレゼンを彷彿させるものなのだ。 そんなモノで,好印象を与えられるわけがない。 決めセリフも比較してみよう。 自民党は,「改革を止めるな!」である。 これはかなりの優れモノである。 1)自分たちが現在進行形で改革を進めていること,これからもさらなる改革を行っていくことを前提メッセージとして組み込みこまれたメッセージである。 2)暗黙裏に民主党をはじめとする「抵抗勢力」が改革を止めようとしていることを示唆しており,「民主党」=「反革命」を前提メッセージとして組み込んでいる。 3)前に書いた「ダンコたる決意」の表明でもあり,改革への揺るぎない決意を表している。 他方,民主党はどうか? 例のCMの最後の決めセリフは,「日本をあきらめない!」である。 これは決めセリフとしてはダメダメである。 1)まず,これはちょっとあきらめかけちゃった人じゃないと思い付かないセリフである。つまり,これは「一度挫けかけた」ことを意味している。 2)また,それは皮肉にも「郵政民営化法案」に対案を出さず,潰すことに全エネルギーを掛けたそれまでの行動と一致する。 3)「あきらめない」というのは,いわば「マイナスから0に戻る」程度の意味しかなく,さらなる「飛翔」といったことを意味しない。 4)このダメさ加減は,「人生をあきらめない」というセリフを聞いた場合を想像してみるとよい。多くの人は「どうしちゃったの?」と思うに決まっているだろう。 CMの影響力は大きい。 圧倒的といっても良いだろう。 自民党優勢で始まったこの選挙において,むしろ民主党は自民党よりもアピーリングなCMを作って挽回を図らなければいけないところで,この失態。 手痛いミスだ。 これは,ちょっとやそっとじゃ取り返せないのではないだろうか。 では,どうしたらよいか? ぼくならば,今すぐ現在のCMは取り下げて,新たなCMを作り直す。 ちなみに,社民党のCMは,お金がなかったため流せなかったそうだ。 一度テレビでみたことがあるが,党首が真っ赤なボーリングのボールを投げてストライクをとるというCMだった。 何をアピールしたいのかもよくわからなかった。 ホント流せなくて良かったね,と思った。 なお,以上は,政党の好き嫌いの話しではなく,「プレゼンの上手下手」の話である。 ゆえに,ご自分の支持する政党の悪口が書かれているといった理由で,くれぐれもご立腹なさらぬよう。 また,プレゼンは政治において本質的なことではない,というご意見もあるだろう。 僕もそう思う。 でもね。 まともなプレゼンの1つもできない政治家たちに,国の行く末を託すわけにはいくまい。 外交一つとっても,他国にヘタなプレゼンして,国益を損なうようなことをされてたら困るのだ。 それに,プレゼンがみんな上手になって,プレゼン能力で差がつかなくなれば,それこそ「内容」勝負になる。 現在は,そうした良質の政治が展開するための,一里塚として捉えれば,良い方向にいきつつあるのだと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/10/18 05:36:25 PM
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