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西條剛央のブログ:構造構成主義

西條剛央のブログ:構造構成主義

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西條剛央

西條剛央

2005/09/07
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カテゴリ:構造構成主義
 9月4日の日記と同じ内容を次世代研のMLに流したところ,取り上げた本の第一著者である愛知県立大学の加藤義信先生から貴重なコメントをいただくことができた。
 
 そこで,加藤先生の許可をいただき,ここに閲覧させていただくことにしたい。

以下,構造構成主義メモ(4):発達心理学史上の信念対立例
http://plaza.rakuten.co.jp/saijotakeo0725/diary/200509040000/
に対する加藤先生のコメントです。

(ネット上の読みやすさを考慮してこちらで細かく段落分けさせていただきました)。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆

西條さん

 愛知県立大学の加藤義信です。

 突然、私の名前がメイルの件名に挙がっていたので、びっくりしました。
 出してからもう10年になる本を取り上げてくださり、ありがとうございます。

 西條さんたちのこれまでの議論の流れをフォローしていないので、的外れになるかもしれませんが、取り上げてくださった範囲で少しコメントさせてもらいます。

 ピアジェとワロンの「論争」は1920年代の後半から1950年代までの長きにわたって続いたとされていますが、その内実は必ずしも「論争」の名にふさわしいものではありませんでした。

 両者が文字通りface-to-faceで議論を戦わせたのは、1928年のシンポジウムの1回きりで、以後は、折にふれてワロンがピアジェの理論に厳しい批判を加え、ピアジェはもっぱら受身の形でその批判に答えるといったやりとりが続きました。

 ピアジェの側がワロンの著作に触れてコメントしたり、その発達思想の根幹に触れる批判をしたことがないという点も、「論争」が一方向的なものであったことを物語っています。
 その意味では、必ずしも生産的な「論争」ではなかったし、不毛な信念対立であったといえなくもありません。しかし、私はこの「論争」は以下の点で、ピアジェにとってもワロンにとっても、それなりに大きな意味を有していたし、歴史的にも振り返るに足る内容をもっていたと考えます(でなければ、私たちが本にまですることはなかったわけですから!)。

 ある理論なり思想が形をなしていく過程では、対抗理論や対抗思想との格闘が必要であり、少なくともワロンにとってのピアジェはそのような存在であったと思われます。

 そのときに忘れてはならないのは、ひとつの理論と、その形成に貢献する対抗理論とは、一見大きく隔たっているように見えても、背景となる問題意識や基本概念群は共有していることが多いという点です。

 ピアジェとワロンの「論争」が、括弧つきながら曲がりなりにも「論争」と呼べるのは、このような背景の共有があるといえるからでしょう。

 たとえば、両者には、知覚と表象との関係を切断において考えるフランス心理学の伝統が背後にあり、したがって、表象を発達のある一時期以後に誕生するものとしてとらえ、その誕生の契機をどのように説明したらよいか、という共通の問題意識がありました。

 その限りでは、関心を共有していたわけです。ただ、そこから先の問題を見る視点が異なってくるわけで、少なくともワロンにとって、自身の立
脚点をたえず確認していくうえで、ピアジェは必要な存在であったのではないかと思われます。

 ピアジェがワロンの批判から多くを汲み取ったという痕跡はあまりありません。しかし、それでも、1950年代初頭から数年間ピアジェがジュネーヴからパリに出張して続けた講義は、情意発達論であったことを考えると、明らかにワロンの批判をピアジェは気にかけ、自らの認識発達論にある種の繕いをしたという印象を受けます。

 このことによってピアジェ理論が豊かさを増したかどうかは意見の分かれるところだと思いますが、ワロンの批判は、少なくともピアジェが自らの理論の広がりの必要性を意識する契機となったことは間違いないでしょう。

 以上、簡単ながら、コメントまで。




◆以下西條から加藤先生に対するレス━━━━━━━━━━━━━━━━

>加藤先生,ありがとうございます☆

>  出してからもう10年になる本を取り上げてくださり、ありがとうございます。
いえいえ,おおいに勉強させていただいています。

この本はそれこそみなさまが10年掛けて編み上げた労作であり,良書だと思います。何十年たっても本当に良い本の価値は,上がりこそすれ,下がることはないのではないかと思います。
http://www.excite.co.jp/book/product/ASIN_4623026612
 まさに,おっしゃる通りですね。まったく関心が共有されていなかったら「議論」にもならないですから。

ピアジェはワロンの意見に一理あることを認めて,少なくとも非明示的には自分の理論を補完していったわけですね。この感覚もなんとなくわかります。

 たしかに,こういう研究者としての関係のあり方もあると思います。理論というのは基本的に個人が創りあげていくものではありますが,他方で,もしピアジェとワロンがお互いの関心をより上手に共有して,建設的にコラボレートしていったら,どんなすごい発達理論を創り上げることができただろうか!と想像してみると,なんとなくワクワクするものもありますね。

貴重なコメントありがとうございました。嬉しかったです。

おかげさまで,ピアジェーワロン論争を捉える「視点」が増えましたし,その積極的な「意義」をより明確に捉えることができるようになりました。

学会の時にでもまたいろいろと教えていただけるとありがたいです。

ではでは。
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Last updated  2005/09/07 12:53:40 PM


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