カテゴリ:心理学
修士論文も博士論文も抱っこの研究で書いたのである。『母子間の抱きの人間科学的研究』の謝辞にも書かせていただいたが,そうしたみなさんの協力がなければ,発達心理学者としての自分はありえなかったのは間違いない。 ぼくは,どの発達心理学の本よりも,観察に協力してくださったお母さん方や,子ども達に,多くの,大切なことを学んだ。 それは,抱っこの知見はもちろんのこと,縦断研究法を体系化したり,質的研究の新たな方法論や理論を作るきっかけになったのも,構造構成主義というメタ理論を作ることになったのも,遡れば発達の現場において,多様で活き活きとしたやり取りや成長の姿を目の当たりにしたおかげなのである。 感謝感謝である。 協力者の多くは埼玉方面だったのだが,一部中野島方面でも,縁あっていくつかのご家庭が協力してくださることになり,毎月1回バイクで通って,各家庭を回らせていただくことになった。 さまざまなことを学ばせていただいたことはもちろんだが,みなさんと会っていろいろな話を聞いたり,子ども達と遊んだりすることは愉しかった。 3年が経過し,観察が終了してお別れをすることになった。3年もの付き合いになるととても寂しいなと思っていたら,なんとそこのみなさんで「トトロの森」という抱っこモニターの会を結成してくださったのである。 「トトロの森」という名前になったのは,おそらくぼくが通っていたキャンパスの周囲の森が『となりのトトロ』のモデルになった森であるという話をしたことがあったからだと思う。 そして,毎年一回,僕の誕生日に,子ども達の成長の様子や近況などをまとめた手作りの冊子を送ってくれるのである。生後数ヶ月の頃からの付き合いなので,どんどん大きくなっていく子ども達の姿をみるとうれしい気持ちになる。 これって本当に有り難いことだと思う。 全面的にお世話になったこちらの方こそ,何かの形で恩返ししなければならないのだが,残念ながら専門書に書かれているような知見は,現場のお母さん方には直接届きにくい。書き方が専門的であるため一般向けではないのだ。 そうしたことから,現場への恩返しの意味もあり,某大手出版社から抱っこの絵本を出版することになった。ストーリーもできていたしーー担当編集者の人もかなりおもしろがってくれてーー後書きも書いたのだが,中途半端なところで,研究書の執筆に追われて頓挫していたのである。 というよりも,そのこと自体今のいままですっかり忘れていたのである。 絵本を出版するということがーー僕に似合わない気がしたこともありーー少しおもはゆい感じがしたので,ごく一部のひとにしか,この話はしていなかったのだが,それがよくなかったかもしれない。公言することで,それを実現するという「公言効果」が発揮されず,忙しさのあまりに忘れてしまうからだ。 ということで,ここに書いてしまうことで,自分をドライブして(駆り立てて)いくことにした。 来年になったらさっそく優先的に取り組んでいこうと思う。 そして,その絵本ができたら「トトロの森」のみなさんに感謝の気持ちを込めて遅らせていただきたいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/12/29 09:39:28 AM
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