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西條剛央のブログ:構造構成主義

西條剛央のブログ:構造構成主義

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西條剛央

西條剛央

2007/08/10
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カテゴリ:教育
(つづき)

▼ 心の病の知識が欠落したまま批判が展開されている。

そして、今回の問題には「心の病」に対する無理解も関係している。

鬱傾向の人に、「がんばろう」というのは禁句だというのはけっこう常識になってきていると思っていたが、高砂親方はその禁句を言いまくっている。面談を続ければ続けるほど、症状は悪化しかねない。

もっとも10日になって、高砂親方が「体調も悪く、自宅前に(報道陣が連日)多くなって動きづらい。いま引っ張り出すのは酷かなと思った」といっており、モンゴルへの帰国についても「考えていないが、治療の過程で出てくるかもしれない」と話したらしいから、秀ノ山理事や、大島巡業部長よりは親身になっているだけまともだ。

それに対して、秀ノ山理事は「なぜ日本で治療できないのか? 何かモンゴルにこだわっているような感じがする」と、まずは国内治療を優先させるべきとの見解を示したらしいが、朝青龍が親兄弟のいるモンゴルにいるということは、日本人の力士が日本にいるのと同じなのだから自然なことだ。

むしろあなたが日本でいじめるために、日本での治療にこだわっているのだろう。

「その上で理事会が開かれた場合は「私は(帰国には)反対します。謹慎処分が出ているのに、ここで認めては他の力士に示しがつきません」と断言した」らしい。

さらに、大島巡業部長は「帰ったら謹慎の意味がない」と改めて反対を明言。急性ストレス障害など心の病の診断書が公になっているが「ストレスなら汗をかけば治る」とピシャリ」とのこと。

ここまでくると呆れてしまう。ヤツは脳みそも脂肪でできているに違いない。汗かいて精神的な病が治るなら、精神科医もカウンセラーも心療内科も必要ないし、年間3万人自殺しないだろう。

最初から朝青龍を「悪者」と決めつけているから当然なのだが、抑鬱的になっていること自体がウソかのように言われているが、横綱で、優勝したから、鬱病になんてなるわけないなんて思っている人がいたらかなりオメデタイと言う他ない。

大島巡業部長は「処分が出てからわずか1週間での心の病に疑問の目を向けた」とあるが、これほどの悪意に晒されれば、1日もあれば誰だって鬱ぐらいなる。

しかも、大島親方は「心が落ち込んでいても力士なんだから汗を流せば奮起するはず。なぜ弟子をけいこ場に引っ張り出して、汗を流させないのか。おかしいよ」と吐き出したという。

おかしいのはあなたですよ。

そして、「ほかの大多数の理事、親方も同意見だろう」と断言したという。

ほーら、きたよ。集団でいじめるいじめっこの決まり文句が。「みんなも思っていると思うけど」ってね。

しかも、これみよがしに、朝青龍欠場のおわびとかいって、他の力士に善行めいたことをさせて、朝青龍を悪者に貶めようとしている点など、こいつは邪悪ないじめのプロだな。それをこれみよがしに報道し、夕張市民の怒りの声を編集して届けるマスコミも同じ穴のムジナ。

「他の力士に示しが付かない」とか言っているが、それ以前にこんな悪質ないじめをしていては、他の国に、他の子ども達に、他の人間に示しが付きませんよ。

こんなものみせられたら、相撲界に入ろうとする数少ない若者はさらに激減するに違いない。こんな陰湿ないじめ世界にまっとうな人はまず入らないだろう。これを愚かと言わず何を愚かと言うべきか。


▼ 歴史を盾にしたいじめの正当化

ここまで論じても、「いや、横綱は歴史があるのだから、罰せられて当然だ」という人もいる。しかし、2000年の歴史を誇るという相撲も、初代横綱は1780年頃、日本相撲協会ができたのが1925年、横綱審議委員会ができたのが1950年ということは知っておいてもいいだろう。

しかも、「横綱という位に品格や資質が必要、という見解を作ったのは、1950年に3横綱の休場という不祥事から、批判逃れに横綱審議委員会を作ったときの苦し紛れの言い訳の産物」らしい。

そもそも、「歴史があるから」→「基本的人権も無視して、治療も優先させずにどこまでもいじめ抜いていい」という論理もまた成り立たないはずだ。

横綱失格というなら、横綱として罰せればいいだけであって、人間としての権利を奪うのはおかしいだろう。それを一緒くたにするのは処罰ではなく、いじめであり、朝青龍つぶしに他ならない。



▼ なぜ朝青龍バッシングが起こったのか?

おそらく、今回のことは、彼のことを以前から意識レベル、無意識レベルでおもしろくないと思っていた人達に、彼をぶったたく「正当な理由」とやらを与えてしまったのだと思う。

「ケケケ、これだけのことをやったら、もうどんなにぶったたたいても、大丈夫だ、それ!みんなで完膚無きまでやってしまえ!!」という善良な国民の、残酷な正義の声が、あちこちから聞こてくる。 おそろしい。

そう、彼らは思う存分叩ける機会を静かにまっていたのだ。

これまで朝青龍は強くて、実績もあったから、叩きたいと無意識で思っていても、そこまで叩けなかったのだ。

それが他に横綱もできたし、大関にあがったやつもいるし、相撲人気も回復しつつある。朝青龍が消えても問題ない。むしろ八百長問題の隠れ蓑にできる。そこで今回の決定的!と言えるような事態が起きたわけだから、いじめが得意な人間がこの機を逃すわけがない。

さらに今回は、過度なバッシングが行われる条件が揃っていた。

まず、彼がモンゴル出身だったため、「日本人の国技を愚弄された」と日本人としてのアイデンティティを触発したという点。

それから朝青龍がいじめても死ななそうにみえる点、鬱病になっても横綱のくせに、ということもできる点、大相撲の歴史を盾に批判できる点、これまでの行いが悪かったから身から出たサビだといじめを正当化できる点等々、自分が罪悪感を感じることなく、安全地帯から好きなだけいじめることができるというわけだ。

特に日本人としてのアイデンティティを触発したのは大きいだろう。日本人は普段は自分が日本人としての誇りを、アイデンティティを重んじているなんて自覚はない。しかし、ひとたびそれを触発するようなことが起きると、無自覚なだけにそれは無自覚ないじめ的なバッシングへと発展する。感情の理屈を貼り付けたようなバッシングが続く。


そして、モンゴル政府の謝罪声明は無視。叩きを阻害するような情報に対しては、完全無視を貫いている。

しかし、仮に今回のことが中国出身の力士がやったことで、中国政府から謝罪のコメントがあったら、さすがに無視を決め込むことはなかっただろう。そんなことしたら中国にどんな厳しい対応をとられるかわからないからね。



▼ 今回のいじめの異常性 明日は我が身

確かに横綱として配慮に欠ける軽率な行動だったのは間違いない。彼の行動がまったく問題ないと言っているひとはほとんどいないだろう。そして他にいろいろ問題行動もあったにせよ、しかし、これまで相撲界を盛り上げてきたのは朝青龍だろうに。彼がいなかったら横綱不在の角界など廃れた可能性だってあることぐらい考えてもよさそうなものだが、それどころか「軽率な行動」をしたというだけのことに対して、病気にまでなっても叩くことをやめようとしない。

病人に石を投げているこの状況を、異常と思わないひとがたくさんいるということが怖ろしい。

戦前の空気もこういうものだったのだろうか。

そして、最初に述べたように、だからといって人間としての基本的人権を奪い、治療が必要と診断されている心の病を抱えている人を公の場に引っ張り出して謝罪させようなどというのは、いじめ以外の何ものでもない。

これは人権意識の高いアメリカのメディアなどで取り上げられたら恥をかくのは日本人だろう。僕は今回の「朝青龍つぶし事件」の異常性には吐き気すら覚える。

日本は「叩いて良い」となったものを徹底的に完膚無きまで叩き続けるという点において、歯止めがかからなくなっている。昔は、「死人に鞭を打つようなことはするな」という教えがそこはかとなく共有されていたように思うが、今は自殺した農相にでさえ、「死ねばいいとおもってんじゃねえ」とか「逃げるな」とかいうコメントが後を絶たない。

これが加速した先には何が待っているのだろうか。

一つ間違えば、「明日は我が身」だということぐらい考える想像力はもっていてもいいのではないか。


▼ 集団いじめの恐ろしさ

こういう日記を書こうものなら、朝青龍がいかに叩かれるに値することをやったのかを、正義の旗のもとで説く人がたくさんいるのを僕は知っている。だから「いじめを見て見ぬふりをするのはいじめているのと一緒だ」と言う人はもいるが、実際にリスクを負ってかばおうとする人はほとんどいない。

中途半端なものを書いたら、自分も叩かれるので怖ろしくて書けないためだ。その気持ちも分かる。実際擁護するようなブログを書いたひとに対して、辛辣なコメントが付けられていたりする。

いじめっこは、「それはいじめだ」と指摘する人間も気にくわないから、その人間ごと非難したり、あらをさがして揚げ足を取ろうとする(しかもそれもたいてい無自覚ときている)。そうした卑しさもいじめっこの特徴の一つといえるだろう。


あなたは、いじめて良い理由があったらいじめる人ですか? 

いじめを見て見ぬふりをする人ですか? 

過度ないじめに待ったをかける人ですか?

いじめに待ったをかける人すらいじめる人ですか?



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【付記】


僕は特に朝青龍を好きというわけではありません。嫌いではないですが、「横綱なんだからもうちょっと大人になろうよ」と思っていたくちです。

しかし、今回の「朝青龍いじめ事件」はあまりにも酷いと思う。その異常性とその異常性にも気づかずにバッシングを続ける「邪悪な正義の権化ともいえるマスコミ」と「善良な国民」には、恐怖すら覚えます。

表面的には朝青龍擁護をしているわけですが、僕は今回のいじめの対象が朝青龍じゃなくとも擁護したでしょう。要するに、過度ないじめに待ったをかけているだけです。

このことについては、そのうち新書にでも書きたいと思います。 しかし、それはだいぶ先の話になるので、朝青龍の記事に関しては積極的に発信していくことにしました(このブログは1ヶ月以上遅れてアップされるのが常なのですが特例ということで)。

なぜかといえば、mixiなどでやりとりしていて、僕と同じような違和感をもっていても、それを言葉にできなくてもどかしい思いをしている方も少なくないと思ったからです。また、今回のは完全な「集団いじめ」ですから、擁護するとなるとかなりしっかりしたものを書かないと、書いた人も叩かれることになるので書きにくいという方もいるでしょう。実際、擁護派の意見が叩かれているものがたくさんありました。

したがって、もしこの記事に共感したという人がいらっしゃいましたら、ご自由にリンク(このアドレスをコピー)していただき、その上で本文をコピペしていただいてもけっこうです 。ご活用いただければと思います。
http://plaza.rakuten.co.jp/saijotakeo0725/diary/200708100001/
http://plaza.rakuten.co.jp/saijotakeo0725/diary/200708100000/


また以下のサイトを紹介していただいたので、僕もとりあえずこの記事をコピペして投稿してみました。もしみなさんもご意見があるようでしたらこちらへどうぞ(どれだけ意味があるかはわかりませんけども)。

http://sumo.goo.ne.jp/toko/index.html
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Last updated  2007/08/20 04:31:09 PM


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