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西條剛央のブログ:構造構成主義

西條剛央のブログ:構造構成主義

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西條剛央

西條剛央

2009/04/02
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「研究以前のモンダイ」がすごいことになりそうだ。

振り返れば2月ぐらいだったかな、打ち合わせをしたいということで、医学書院の方が3名研究室にきてくださった。研究以前の企画、担当してくださった鳥居さんと、内田樹さんの本などを手がけた白井さんと、JNNスペシャル担当の石塚さんだ。

原稿はとっくに完成していたので、顔合わせ程度だろうと思っていたのだけど、どうも様子が違う。なぜか少し皆さん緊張気味。

話を聞いてみると、できるだけわかりやすくして多くの人に読んでいただくために、できる限り図解、チャート化、イラスト挿入などによって解説を充実させたいという提案だった。

と聞いてやや緊張されている理由がわかった。

というのも内容は原理的な研究法の本であるためだ。業界外の人にはなぜかわからないかもしれないが、理論書や哲学書をできる限り、図解、チャート化するという試みはほとんど行われていないため、偉い年配の哲学者にはそういう提案をすることすらまずできないだろう。

その理由は簡単で、理論書や哲学書を書く人は、文章の美麗さ、論理展開や原理性の深度といった膂力だけで書くべきだ、という信念をもっていることが圧倒的に多いためだ。

分かりやすく図式化する、ということが原理が低められたかのように感じるためか、そういうことにある種の抵抗があるのだ。それに自分が論理展開だけで理解できるタイプの人は(むしろそうしてうんうん言いながら読み解いていくのが愉しい)、そうした必要性を感じないということもある。





僕もそういう気持ちもわからないでもなのだけど、しかし、それによって秀麗な文言によって本質が覆い隠されてしまう哲学書も少なくない。

まだそれならいいのだが、何も先に進めていないくせに、難解な語彙とレトリックと読者を煙に巻き続ける「偽哲学書」も後を絶たないのは問題だ。

僕は学生の頃、そういう(ようにみえる)本を読むと、自信(内容)がないから、そうしているんじゃないのか、と勘ぐりたくなったものだ。





何よりも科学者の端くれ(心理学者)からすれば、そうした「わからなさ」は反証可能性、継承可能性を低める要因でしかない。それでは批判もされにくいし、発展性もなくなってしまう。

理論はツールである、と考えている僕からすれば、使ってもらってなんぼである。

だから『構造構成主義とは何か』は目的(さしあたり信念対立の解消と広義の科学性の担保他)を明示し、その目的を達成するために必要な理路(方法概念)を導入して、その結果その目的を達成できる、という論証の仕方を徹底したのだ。

そして部分的に、構造的におかしいところは修正、反証できるよう構造構成主義のモデルを図示した。

鳥居さんがその打ち合わせで、「『構造構成主義とは何か』を当たり前というひとがいるけど、実際『構造構成主義とは何か』のような原理的な理論書(専門書)で、自分の理論を構造化して図示したものはそれまでひとつもなかったですよね」とおっしゃっていたが、実際そうなのである。

もっともそうした淡泊な?書き方をしている点については、哲学好きの人からは「エロスがない」といった不満を呈されることもないわけではないが、それは自分のエロス(欲望)にあっていないということだけであって、エロス(関心)のあり方がこれまでとまったく違うために、それがわからないだけなのだ(とはいえ、いまだったらもう少し違う書き方をするだろうというところはあるけどね)。

逆に『構造構成主義とは何か』が医療系や人間科学、社会科学系の人の方が通りがよいというのは、科学的な論文の型を踏まえて書いたということもあるだろう。





ということで、医学書院では、構造構成主義と図解化の相性がよいということに気づいたらしく、また他の人なら頼めないが、僕だったら大丈夫ではないか、ということで相談しにくてくださったらしいのだ。

初刷りでかなりの部数を出したいらしい。そのぐらい出したら看護界が変わると思う、とおっしゃっていた。

僕はさすがにそこまで徹底的に図解化するというのは考えたことがなかったし、やはり先に述べたような抵抗感がないわけではなかったのだけど(個人的にはポケットに入るぐらいの文庫本サイズにしたい気もしていた)、たしかに看護師向けに出すということと、わかりやすさということを考えるとそっちの方がベターだと思ったし、何よりもそのときの編集者達の「よいものにしたい!」という熱というか気概が伝わってきたので、「じゃあそれでいきましょう」とほぼ即答した。

やってみないとわからないことも多いけど、これだけの情熱をもった皆さんの助力を得れるのだから、さらに良いものにならないはずはないと思ったのだ。業界初の試みというのもチャレンジングでおもしろい。

ということで、「研究以前のモンダイ」は)「JNNスペシャル」(Japanese Journal of Nursing Special)として公刊されることになりました。

これは医学書院(業界最大手の出版社)からいわば「スタンダード」という「お墨付き」をもらって出版するようなことを意味するらしい。連載当初はかなり異色のものだったと思うのですが、結果そこまで評価していただたということが、ありがたいなと思います。

(といった話を岩田健太郎さんにしたら「僕でよかったら書評書きますよ」といってくださったので、「ぜひお願いします!」とお願いしておいた)。





それで先日石塚さんと二回目の打ち合わせがあったのだけど、これが思った以上に愉しい、創造的な作業になった。

作ってきていただいた暫定的なアイディアをもとに、僕がそれを伝えるならどうすればよいかと考えるのだけど、どうやら、僕はもともと視覚的なイメージで理路の原型を掴むタイプのようで、考えているとどんどんアイディアが浮かんでくるので、それを紙に書いていく。

石塚さんさんは、それに心から感動(感心)してくれる(そして的確なコメントをくださる)ので、僕もなんだか嬉しくなって調子があがっていくという好循環だった(僕は典型的な褒められて伸びるタイプだ(笑)。みんなそうだろうけど)。


そんなわけで出版は夏ぐらいになると思います。想像以上にわかりやすくなっていること間違いなしと思うので、もう少々お待ちください。








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Last updated  2009/05/31 10:24:29 PM
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