|
|
|
2009/07/04
カテゴリ：漫画
 『PLUTO』の最終話を，浦沢直樹自身の，作品志向と商業主義の狭間の葛藤とその超克という視点を置いて，再解釈してみました。 【注】以下，もろネタバレありなので原作を愉しみたい方は原作を読んでから読むことを強くおすすめします。 ------------------ （以下，最終話までの流れ） アトムは仲間を殺した宿敵プルートゥと対峙する。プルートゥ以上の憎悪をもったアトムはプルートゥを圧倒する。憎しみを制御できずにプルートゥを殺そうとする刹那，ゲジヒトの死の直前のシーンが甦る。 ゲジヒト「憎しみからは何も生まれないよ……」 アトムは「ゲジヒトさん，あなたの言うとおりです……ゲジヒトさん……」と涙を流す みるとプルートゥも「なんだこれは……なんだこれは……」と言って涙を流している。 アトムも「ボクにもよくわからないんだ……なぜこれが流れるのか……わからなんだ……」 こうして二人は涙を流す ……その後，二人は寝ころんで星空を眺めていた。流れ星に何かを祈った。 アトムは，「サハド（プルートゥ），ボクいかなくちゃ……」といってマグマだまりで反陽子爆弾を爆発させ地球を滅亡させるようとするゴジ（巨大な赤ちゃんのようなフォルムをしているロボット）を止めるべく，地中深く【深層心理】に突入する。 （以下，最終話（一部）。原作通りですが【 】は解釈挿入箇所。 ） ボラーに対峙するアトム アトム ボラー…… ボラー ホギャアホギャア アトム 聞こえるかいボラー……ゲジヒトは教えてくれたんだ。憎しみ【商業主義】からは何も生まれないって……憎しみ【商業主義】は止めなきゃ…… ボラー ボラーーーーッ（高熱で攻撃する） アトム わかった。しかたない……はじめるよ。反陽子爆弾【反用紙爆弾：商業主義】解体に約５分………ボクの体が溶け出すまであと５分……計算上では不可能……でも……やってみるよ!! （といってつっこもうとすると後ろからプルートゥの大きな手で全身を捕捉される。） アトム おまえは……サハド…… プルートゥ 行くぞ。 アトム え…… プルートゥ おまえの体は僕がまもる。突っ込むぞ。 アトム うん。 ゴジ プルートゥ!! いや，サハド……おまえに私を止めることはできない!! 私はアブラー【手塚治虫】だ! おまえの創造主だ！ おまえの父だ！ プルートゥ いいえ……あなたはゴジ【浦沢直樹】だ。 ゴジ 私はアブラー【手塚治虫】だ!! 私はアブラー【手塚治虫】だ!! プルートゥ 父さんは……アブラー博士【手塚治虫】は死んだ。 あなたは，自分をアブラー【手塚治虫】だと思い込んでいるゴジ【浦沢直樹】だ!! ゴジ 私はアブラー【手塚治虫】だ!! 私はアブラー【手塚治虫】だ!! プルートゥ おまえはただの人工知能【リメイク漫画家】だ!! ボラー ボラーーッ!! （といって攻撃する） プルートゥ おまえは間違っている!! 憎しみ【商業主義】からは………何も生まれない!! ボラー ホギャアア ホギャアア （攻撃する） アトム 早く，反陽子爆弾【商業主義】を解体しないと……僕の体が持たない……!! プルートゥ アトム…… ウランによろしく言ってくれ。 アトム え……？ プルートゥ 以前，いっしょに絵を描いたんだ。 アトム サハド…… プルートゥ 花畑【作品】をつくること……それが……僕の仕事だった…… アトム サハド……!! プルートゥ 僕はもうサハド【漫画を描き始めたばかりの浦沢直樹】には戻れない。 アトム サハド!! （プルートゥはアトムを掴んだまま自分の手をロケット発射させ，アトムを逃がしてゴジに突っ込む） アトム サハドーーーーー!! その後，反陽子爆弾は爆発して世界は終わるのかと思うのですが，気候を操作できるプルートゥがその身とひきかえに爆発自体を凍らせたことによって，世界は守られるのでした。 このようにして置き換えて解釈してみると，ゴジは商業主義にとりこまれた浦沢直樹，そしてサハドとアトムは浦沢直樹の職人としての良心，そしてこのシーンは浦沢自身の内なる葛藤と，商業主義にとりこまれる以前の自分に戻れないことをわかっていながらも，その暴走を止めようとする物語としても解釈できます。 もちろん，解釈は解釈に過ぎず真偽というものはありません。ただこうした視点をおくと，浦沢直樹はある種の葛藤を超克するために，自身の漫画家としての誇りをかけてこの作品を書いたということが，より深い次元で表現されているようにも思うのです。 ［全巻大人買いしたい人↓］  お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
Last updated
2009/07/04 04:49:21 PM
[漫画] カテゴリの最新記事
|
|
