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カテゴリ:構造構成主義
ちょっと前に藤原正彦著『天才の栄光と挫折――数学者列伝』を読んだ(後で気がついたんだけど『国家の品格』を書いた人です)。 文字通り数学の天才達の列伝なわけだが,いやいやほんと凄い天才っているんだなとおもしろく読んだ。藤原先生は数学力のみならず,卓越した文才も兼ね備えているようです。理文両道の鏡ですね。 で,ニュートンの以下の下りを読んで,不遜にも,『構造構成主義とは何か』はそのあり方としてニュートンの『プリンキピア』に似ているなと思ってしまった。 『プリンピキア』の位置づけについての下りで,以下のように書いてあった。 「微分法ではフェルマー,積分法ではワリス,両者の関係についてはバロー,という手本があった。力学については,運動の三法則のうち,二つはガリレイのものだし,天文学においては,二十二年間にわたる超人的観察と,信じられぬ洞察力により見出された,ケプラーの三法則があった。独立した三分野,数学,力学,天文学のそれぞれにおける諸成果を,完全無欠な有機体として統一したのが『プリンキピア』である。」 ようするに無から有を作り出すことはできないのだが,それぞれの最新の成果を組み合わせて,これまでまったく別と思われていた地上の運動を説明する力学と,天体の運動を説明する天文学を同一の構造で説明した点にニュートンの凄さがある,ということ。 これになぞらえるならば, 「認識論や現象学ではフッサールと竹田青嗣,存在論ではロムバッハ,記号学ではソシュールと丸山圭三郎,構造論と科学論は池田清彦といったように,現象学,存在論,認識論,記号学,構造論,科学論,といったそれぞれの領域の諸成果を人間科学の原理足る有機体として統一したのが『構造構成主義』である。」 ということができるだろう。 * たまに構造構成主義に対して「結局過去の偉人の言っていることを発展させただけ」というようなことをいう人がいるが――そういう人はまず例外なく『構造構成主義とは何か』をちゃんと読んでいないのだけど――,それじゃニュートンも単に「結局過去の偉人の言っていることを発展させただけ」ということになってしまうじゃないか。 これは単一の系を発展させた,という話とはまったく次元が異なることなのだと思う(単一の系を発展させることだってちゃんとできたら学者として存在した意味があったというぐらい凄いことだ)。 万有引力の法則は,独立した諸学の成果を有機的な理論として統一し,最も遠いと思われているものを同じ原理(構造)でつなぐところにこそ,その“凄さ”と“美しさ”がある。こうした理論は“いずれ誰かが作った指数”が極度に低くなるのだ。 だからニュートンがいなければ科学の発展は50年は遅れたと言われるのである(そうすると今1959年ぐらいだったということになる)。 * 構造構成主義の白眉は,存在論,認識論,記号論,構造論,科学論といった個別の領域を,「現象」「構造」「関心相関性」といった最小限の概念で一貫性のある形で基礎づけられ,人間諸科学の原理にまで創発している点にあると僕は思っている。 『バガボンド』30巻で,刀鍛冶の名工である光悦が,「強さと美しさは同じもの」と言っていた。 構造構成主義が様々な領域に応用されているのは,その理路整然とした美しさによるところが大きいだろう。 理論の機能と美しさは同じものなのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009/10/08 04:54:11 PM
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