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カテゴリ:小説。
「ねぇ…2つ報告があるの」
彼の温もりを感じながら、私は彼の腕の中から離れる。 「何…?」 彼は目を細めつつ、ベッドの隣のサイドテーブルに手を伸ばす。 そこにはタバコとジッポーが置いてあった。 「私、来月誕生日じゃない?」 「あぁ…そうだね」 タバコを口にし、煙を吐き出す彼の表情は これ以上ないというくらい幸せそうな顔だった。 「何か欲しいって?」 「そうじゃないの」 「別にいいけど?欲しいものあるんだったら言いなよ」 「だから、、違うの」 あなたに私の欲しいモノなんて用意出来ないから… 決してそれは口にしなかったが。 「じゃぁ、何?」 「私…会社を辞める事にしたの」 「本当に…?」 彼は一瞬、言葉を失う。 私は彼の目をまっすぐ捉えながら 「えぇ。来月いっぱい…もう上司にも話したの」 「…なんで?急に」 彼は動揺を隠せないのか 煙草を灰皿に押し付けるように潰して、新しい煙草に火を付けた。 「私、違う仕事をしてみたいの」 彼は無言で私の顔を見た。 まったく感情が読み取れない。 「別にいいんじゃない?オマエが決めた事だし」 「あと、もう1つ」 「今度は何だよ」 息を止めて、彼の目を見る。沈黙… 「もう、この関係終わらせよう…?」 「…どうして?」 「私、このままじゃ駄目だもの」 「何で?」 「私だっていつまでも若くないよ」 「…意味がわかんねぇよ」 「お願い」 「何もわからないで別れられるかよ?」 「お願い…」 自然と涙が流れた。何故だかわからないけど涙が溢れてくる。 「俺、何かしたか?」 「…してない」 「嫌いになった?」 「…違う」 「他に好きなヤツでも出来た?」 「そんなのいないよ」 「じゃぁ…」 「とにかく私はこれ以上あなたといれないから」 「そんなんで納得出来るかよ!?」 「納得なんてしてもらえなくていいよ」 「オマエはそれでいいかもしれないけど、俺は無理だよ」 「何で?」 「何でってさ…オマエ」 涙で潤んだ目で彼を見つめた。 必死に訴えるような顔で見た。 「…。」 彼は完全に言葉を失い、下を向いて思いっきり息を吐き出した。 「ゴメンね…」 彼に頭を下げ、私は部屋を後にした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/05/27 02:49:29 AM
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