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Burning Red

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魚焼き機

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もっそもりやま@ (  ̄ω ̄)ゞ<ももっ おじゃましまーす。 おもしろくて初めか…
魚焼き機@ ……ツンデレ。 それはもう十分に素敵なツンデレだと思う…
世亜羅@ 私的には・・・ デレ対象は冷や汗を垂らしつつも 「旨い…
2006.08.31
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―――その朝、やや遅く出勤してきた彼は、何故か矢鱈と不機嫌だった。



タダでさえ剣呑な風体だというのに更にその生来の素直さ故にか苛立ちとやり場のない怒りをあらわにしているその時の彼はどう贔屓目に見ても、それこそ「ガキが見たら泣く」様な、まぁなんと言うか極普通の善良な一般市民であらば、まず目を合わせる事を避ける様なともかくそんな風な物騒な雰囲気を惜しげもなく振りまいていた。

(なーにやってんだか、この人は)

とはいえ「仕事上の」との但し書きは付くが、それなりに長く深い付き合いのあるまなやその他のスタッフにしてみれば、そんな不機嫌の大安売りはよくある日常のひとコマでしかなかったし、そう感情を動かさなければならない特異な出来事でもなかった。―――だって、そんなヤワな神経じゃやってられないし。

だから、

「どうしてそんなに怒ってらっしゃるんですか?」

いささか古風な黒縁眼鏡と二つ分けのお下げ、規定通りに着こなしていたとしてもやや露出過多気味の制服の胸元をギュっと押し上げる豊か過ぎるくらいの双丘がトレードマークの、いかにも大人しく淑やかそうな風貌の女子職員ですらも、それが本当に大したことでもないかのような気楽さで、熱い緑茶がなみなみと注がれた湯飲みを差し出しながら問いかけたのだった。

所謂一つの「巨乳眼鏡っ娘」な部下の問いに、熱い緑茶をこともなげに一気に飲み干してから、物騒な雰囲気の源―――火麻はいかにも忌々しそうな口調で、

「地震だよ、地震」

「…地震、ですか?」

思いもよらなかった返答に、レンズの奥の目を瞬かせながら、松永は首を小さく傾げた。―――地震なんて、あったっけ?

そんな彼女の内心を見透かしたように、

「ああ、さっきの奴? 結構大きな地震だったみたいだけど…」

まなはいつも通りの微妙にへろりんとした声色で、自分用の端末のディスプレイを指差した。―――確かにそこには「関東一帯で震度3~5の揺れ」の文字。

「でも、確かに少しの間電車は止まっちゃったみたいですけど、参謀は出勤に電車をご利用ではありませんよね?」

同性同士の気楽さだろうか。ふにふにと柔らかそうな胸がまなの後頭部に、僅かに触れそうになっているのも厭わずに地震情報を覗き込みながら松永が指摘する。

だが、それをあっさりと否定したのは火麻ではなく、まなの一言だった。

「ううん。…確か、先月あたりに免停食らって以来、電車で来てたんじゃなかったっけ?」

「…そうなんですか?」

にやにやと。或いは、純粋に不思議そうに。二種類のまったく質の違う目線の競演に耐えかねたのか、火麻は悪戯が咎められた子どものようなばつの悪い表情で、

「まぁ、な!」

とヤケクソ気味に力強く肯定した。

「で、また遅刻したんだ」

まなは億劫そうにそういいながら、それでも不思議なことに楽しそうな表情で端末のキーを叩きながら、

「しかもこれで今月も10回目。…私、今月はジンギスカン食べたいなあ」

「言ってろ、馬鹿」

ジンギスカン? 突如出てきた不可解な単語に松永は内心首を捻った。言葉の意味、指し示している物自体は分かるのだが、何故こんなときに出てきたのかについては理解できなかったのである。(これが後から聞いたことだが、先日まなと火麻の間で「一ヶ月間の遅刻の回数」をネタにした賭けがとりおこなわれたらしく、つまりこの時のまなは自分が賭けに勝ったときの報酬について喋っていたのである)

「で、でも!!」

勝ち誇った様に上機嫌のまなと、それとは対照的に一段と強力になった不機嫌さをまきちらす火麻の間の気まずい空気を取り繕おうと、松永はひときわ明るく元気かつ無邪気そうな声で、

「しかたないですよ地震があったんですし! ええ、自然災害ですからしかたないですよ!!」

そういいながら「ね、ね!?」と口に出さないまでも、いかにもそんな雰囲気を滲ませながら二人の顔を交互に見つめてみる。その姿はあたかも、両親のけんかの仲裁をする健気な長女の風情だった、とはそれを遠巻きに眺めていたスタッフその1の証言である。

そして、そんな彼女の姿にほだされた―――というわけでもないのだろうが、

「…ま、それはそうなんだけど…ねえ?」

「ん…まぁな」

元来二人とも、直情的に過ぎ尚且つ頑固すぎるきらいこそあれど、決して理不尽で愚鈍なわからずやということでもなく、そもそも今回の場合は深刻な喧嘩では最初からなかったのだから、松永のいじましいフォローを水泡に帰すような理由も無かった。

「そうですよ! だって大自然の思し召しですから。だから、特定の「何か」や「誰か」を責めたってしょうがないですよ!!」

確かに。確かに地震やそれにまつわる交通機関の遅れに関して、怒りをぶつける対象など明確に存在していないことは事実なのだが―――別に、今の彼らはそういう話をしていたわけでもない。

もっとも、そんな細かなことを一々取りざたする必要も無いだろう。だからまなは、

「そうだよねえ…あ、でも地震の元とかは責めてもいいような気が」

「地震の元…ですか?」

突拍子も無い一言に松永だけではなく、火麻や周囲のスタッフたちもキョトンとした顔で発言の主であるまなの顔を見つめてしまう。地震の元って一体何なんだ?

「うん…ほら…」

そして実はまな自身ですらも、その一言は別に深い考えが合って口にしたわけではなく、それこそ勢いというか、会話の流れの中で何気なくポロリと出てきてしまったに過ぎないのだが。

しばしの沈黙。

その沈黙自体が追い風となって、いまやその場にいたほぼ全員がまなの次の一言を心待ちにしていた。―――あーもう。どうなってもしらないからね!



「…な、なまず、とか?」










★★★★★★★★★★

夕方の地震にビビリまくった怒りを込めて、あらすじも何も決めずに本当に勢いだけで書き上げました。…お陰でオチが弱い弱い。しかもヒロイン、まなじゃなくて松永みたいだし。夢物である必然性も無いし。でも、こういうしょうもない日常を書くのは好き。っていうか、そういうのしか書いてないし。好きなものを書くのが一番だよね!?





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Last updated  2006.08.31 21:52:32
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