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カテゴリ:感想(本・漫画)
タイトルこそ何か凄いですけど、読んでみると割りと正統派で古風な印象の怪奇小説でした。―――いや、執筆年代が本当に古い(100年近く前!)のことを考えると古風なのはむしろ当たり前なんだけど。
文章はちょっと冗長な感じはあるかな? とはいえラヴやん御大の文章に鍛えられた身としてはそう気になるほどでもなく、むしろ細かい情景の描写は想像力を程よく喚起してくれました。特に「霊魂の侵略者」における猫のスモーク君の行動の可愛らしさといったら…!! ただ、作品ごとに翻訳なさった方が違うせいか(あとがきによると「霊魂の侵略者」「炎魔」「四次元空間の囚」が桂千穂氏、「いにしえの魔術」「邪悪なる祈り」「犬のキャンプ」が紀田順一郎氏の手によるそうです)、一部では共通の登場人物の印象がまったく異なってしまっているのには、初読時には少々戸惑うかも。―――特にハバード君(サイレンス博士の助手?秘書?)は「炎魔」と「犬のキャンプ」ではかなりキャラが違うし。(ちなみに私は「炎魔」のハバード君の方が好み) いにしえの魔術 凡庸な男が、ふと寄った街で体験した奇怪な出来事… 個人的には「ここまで歓迎されるなら、別にそこにいついてもよかったんじゃ?」と思ってしまった短編。だってほら、猫っぽい美少女にも迫られてるし! 日本のギャルゲ・エロゲ界の男だったら、現実世界に帰還しないよなぁ… この辺の違いは、各々の文化風土と宗教的な価値観の違いなのか、それとも健全な常識人とヲタ界の水を飲んでしまった人間の差なのか。 霊魂の侵略者 取り付かれたユーモア小説家を救うため、サイレンス博士は飼い犬&飼い猫と屋敷に潜入するが… もうとにかく猫のスモーク君が可愛すぎる。ギッチリな描写で語られる猫の行動、生態―――ねこ、ねこ、ねこ、ねこぉぉ!! 真面目に話すならば、幽霊(?)とサイレンス博士の対決は、激闘は激闘なんだろうけど表に出ている行動は少ないんで、現代のゴーストバスター物の派手なアクションになれた人には少し物足りないかも。(これはこの話に限った話ではなく、「炎魔」や「犬のキャンプ」でも同様の傾向があります) ただその分、じっとりと迫ってくるような不気味さは十分すぎるほどなんで、一長一短かと。 炎魔 とある退役軍人からの依頼を受けたサイレンス博士は助手のハバードを伴ってその屋敷を訪れるが… 助手フェチの私的にはとにかくハバード君萌えで説明できて、ついでに小説自体もタイトルの通り「燃え」だったりする。 っていうかまぁ隅から隅までハバード君のサイレンス博士自慢…惚気にしか読み取れなかったのは私の脳髄が腐ってるからなんだろうけど、でも結構この二人は肉体的接触も多かったりして萌え。ハバード君ってばサイレンス博士が一声かけただけで安心してしまっているのも可愛いし。 ―――あ、事件とその関係者に関してまったく語ってないや。 邪悪なる祈り 30年ぶりに母校を訪れた男が過ごす恐怖の一夜… うーん、取り敢えずはプロテスタント系の寄宿学校怖っ!な感じで。ここで語られた、主人公・ハリスの送った学生自体とは、厳格に規律を守る陰鬱ながらも楽しい学園生活…なんでしょうけど、どうにも私にはその辺の感覚は馴染みがなく、ここまで厳しいとちょっと引く。 怪異の現れ方とその種明かしは割と好み。好きなんだよねえ、こういう信仰が根底にある儀式のお話。描かれ方も割と典型的な感じで、他の話に比べて分かりやすい構造なのかも。 犬のキャンプ 無人島でキャンプを張る一行を襲った獣の正体は… 事件が起きるまでが長いけど、起こってしまえば事件自体に関しては割と単純だし、主要人物の一人である少女・ジョーンは中々魅力的な女の子(私基準だけど)なんで楽しかったりと、いい作品だとは思うけど――― ハバード君、キャラ違いすぎ。サイレンス博士相手にタメ口ってのにまず驚いたよ、私ゃ。(勿論、これは先述したとおりの翻訳者の違いゆえに起きた事態なんだろうけど) でも、博士との仲良しっぷりとかには違いはないんで、その点は一安心。 でも、この話って結局は長々とあるカップルの誕生に付き合っただけのような気がしないでもない。 四次元空間の囚 サイレンス博士の元を訪れた、存在感の薄い奇妙な依頼人… ―――数学に弱い私的には意味がよく分からなかった一編。 とりあえず四次元といえばドラえもんのポケットしか浮かばないんですけど…駄目? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.09.06 18:24:06
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