カテゴリ:ひとり言
今手にしている本、浅田次郎著「パリわずらい 江戸わずらい」。 JALの機内誌に連載されている著者のエッセイを単行本化したエッセイ集、「つばさよつばさ」、「アイム・ファイン!」 に続く第3弾。 本棚の奥より引っ張り出してきて、また読んでいます。人気時代小説作家浅田次郎は、無類のエッセイイストでもありますね。 ユニークな題名の前半部分からは、1年の内1/3は旅をしているという無類の旅行好きを自認する筆者のことが彷彿されます。ヨーロッパを訪れるときは、行き先がどの国であれ必ずいったんパリに下りるという無類のパリ好きであることを、エッセイの中でも記していますね。 後半の部分からは、ご維新ではご先祖がこっ酷い目をみたという武士の系譜をもつ東京下町生まれの江戸っ子の生い立ちがにおってきます。 筆者いわく、小説家は創造力を発揚して架空の話をでっちあげる「嘘つき」でなければ務まらないし、随筆家は自分の心に感ずるままを正直に書き綴る「正直者」でなければならないと。 平生3本の連載小説を同時に抱えて、毎日「嘘の限り」を考えながら、その締め切りの合間に「正直者」の原稿にも追われている毎日と、自ら自嘲気味にいう筆者。 いったい浅田次郎の頭の中はどうなっているのだろうと思いたくなりますが、天才文人の頭の中なぞ、凡夫にわかろうはずがありません。 唯一わかるのは頭の中ではなくて、外。頭髪が後退したみごとに秀でた光り輝く額ぐらいか。(笑! おそらくその前頭葉に収まっている脳みそは、深いしわが刻まれているのでしょうな。 超多忙作家が国内外の旅先で遭遇した抱腹絶倒の出来事から、日常の身辺に起こる驚きと感動のエピソードを集めたエッセイ40篇。 題名にもなった「パリわずらい 江戸わずらい」は、文字通り「わずらい」のことを言っている。浅田がパリを訪れると、不思議と冬ならひどい風邪をひいて寝込むことになるし、夏なら胃腸をこわして腹を下してしまうと。 「江戸わずらい」とは、当時の江戸の風土病・脚気について言及したもの。江戸時代も幕末のころになると贅沢が庶民にまで浸透し、白米を食べるのが当たり前になったとか。それまで食していた玄米の胚芽に含まれるビタミンB1を摂れなくなったが故に、深刻な脚気が蔓延したのだと。 そういえば幕末の将軍13代家定、14代家茂はひどい脚気に悩まされていたとか。死因はいわゆる脚気衝心であったそうですから、ビタミンB1不足による心臓麻痺ということでしょう。 上は将軍、下は徳川八万旗といわれた旗本・御家人ばかりでなく、広く江戸の庶民に至るまで脚気に悩まされていたのであれば、薩摩長州の勢いを止めることができなかったのもむべなるかな。 はたして浅田のご先祖様浅田次郎左衛門(浅田はしばしば自分の先祖の当主のことを"次郎左衛門"と洒落ている)も、脚気に悩まされていたのであろうか? 幸いなことに、私は脚気に悩まされるという経験はありませんが、「浅田次郎わずらい」だけは当面解消されそうにありません。 にほんブログ村 FC2ブログランキング 人気ブログランキング PINGOO! ノンジャンル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年12月22日 11時50分05秒
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