カテゴリ:ひとり言
本日の日経最終面、詩人の四元康祐氏投稿の「詩探しの旅」は、冒頭オランダの詩人、カイ・ニエミネンさんの現代詩から始まっています。カイ氏は詩人にして日本文学者。ライフワークは『源氏物語』とか。そのせいか氏の日本語は古風な平安調だと紹介されています。 わが国の古典文学を代表する作品といえば、『源氏物語』を誰しも思い浮かべることが出来ますが、それに終生向き合おうという人はまれでしょう。 私が『源氏物語』に出合ったのは、高校3年生のちょうど今頃ではなかったか。夏休みの古文の補習授業で読まされましたね。ずいぶん難義をしたものです。(苦笑! ・・・正直に申し上げます。いつの日か機会があれば、また『源氏物語』をじっくり読んでみたいなどとは決して思いませんでした。(笑! ところが現在鹿児島で開業医をなさっている医師鹿島友義さんの源氏物語へのこだわりは、オランダの詩人カイ・ニエミネンさんにも勝るとも劣らぬ並々ならぬものがあった。63歳のときに日本を代表する古典「源氏物語」に挑戦することを決意されたそうです。 鹿島先生は医者の道に進まれたのですから、大学進学のときには理科系の教科を選択されたのでしょうけれど、何といっても国語は医学部であろうとも必須科目。現代文の他に古文や漢文の設問も必ず出題されましたから、やはり私と同様に高校3年の夏休みに『源氏物語』を読まされた口に違いありません。 しかし、鹿島先生の場合はまた読みたいと思われた。・・・スゴイですね。(笑! お忙しい本業のお医者様の仕事の合間をみて、原文を読み進めたというのですから、ただただ恐れ入るばかり。それで自ら著したのが、『 医者が診つめた「源氏物語」』(燦葉出版社) 鹿島先生の強じんな意志とご努力もさることながら、私が強く興味を持ったのは、登場人物の「病気」を専門の医学的見地から考察しようとされた工夫。 たとえば、有名な「いづれの御時にか、女御・更衣あまたさぶらひたまひける中に・・・」で始まる最初の章にに登場する桐壺の更衣。この主人公光源氏の母親は、「はかなき心地にわずらひて」とあるように、現代流に言えばストレスが原因の心身症。 もののけのせいで難産になった源氏の正妻葵の上は、物語のモデルとなった一条天皇の中宮彰子とすれば、糖尿病とされた藤原道長の血をひく娘であることを考慮すると、糖尿病前の状態で胎児が通常より大きく育ったためではないか。 源氏の親友の長男柏木は、「まことに心地もいとなやまし」なのは、きちょうめんでまじめな性格の人にしばしば診られるうつ病が疑われる・・・など。 平安貴族が病気にかかったときのプライマリーケア(初期治療)が、加持祈祷であったというのも面白い。その風習は科学・医学が進歩した現代においても、わが国に依然として根付いており、現下各地で神社仏閣にコロナ禍退散の祈願が催されているではありませんか。 こうした源氏物語読解の成果をこのたび本にまとめ上げられた鹿島先生と、カイ・ニエミネンさんにあっぱれ! 拍手喝采を送ります。 にほんブログ村 FC2ブログランキング 人気ブログランキング PINGOO! ノンジャンル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年07月10日 11時50分08秒
[ひとり言] カテゴリの最新記事
|
|