カテゴリ:本
一昨日、NHKの人気番組「ダーウィンが来た」の撮影クルー3人を主人公にしたドラマが放映されていましたね。動物オタクの男性ディレクターと新人の女性アシスタントディレクター、それに中年カメラマンのトリオがくりなすドタバタ劇。俳優の名は忘れましたが、男性ディレクターを演じた役者は、確か大河ドラマ「光る君へ」で花山法王役で出演していましたね。藤原伊周、隆家兄弟に矢を射かけられて慌てふためく様を好演していました。 野兎を追っての山に分け入った3人の苦労がコメディータッチに仕上げてありました。そのワンシーン。沢を歩いていた女性アシスタントディレクターが、突然大きな悲鳴を上げる。ズボンの裾をたくし上げると、足に大きなヒルが3匹吸い付いているではありませんか。 ライターの火を近づけるとポロリと簡単にとれると冷めた感じで説明するだけで、吸い付いたヒルを取ってやろうとしない男性ディレクターが、慌てふためく花山法王とダブって、絶妙に面白かった。 ところでこの決して気持ちがいいとは思えぬヒル。我が大和民族はこのヒルを歌や俳句によく読んで来たことをご存じでしょうか。この嫌われものヒルが、有史以来人間と関わりが深かったというのですから驚きです。 小池光著 『うたの動物記』に書いてありました。 「古事記の国生み神話では、女性であるイザナミノミコトが先に愛を告白してしまったがために『蛭子』が生まれ、これを葦船に入れて流してしまう。物語のはじまりから、忌み嫌われてきた」と書かれているところをみれば、ヒルは神代の昔から生息していて、恐れ多くもご神体に吸い付くこともあったのだろう。 小池先生が本著で紹介している歌から、 我妹子(わぎもこ)が蛭の血を拭く蕗葉(ふきは)かな 松浦青々 もはやヒルの不気味さは微塵も感じさせませんね。我妹子の白いふくらはぎ、赤い鮮血、フキの葉の青、妖艶な美女のなまめかしさを演出するヒルです。 日本人の感性の豊かさが感じ取れる味わい深い一句と言えましょう。 そういえばヒルに吸い付かれた女性アシスタントディレクターのふくらはぎも白かったなあ。(イエローカード! ちなみにヒルは夏の季語であるということです。 「酒とそばと」幻冬舎から好評発売中この度幻冬舎さんのご協力を得て、拙著『「酒」と「そば」と』を出版しました。このブログの酒とそばについて書いたものを加筆修正したものです。肩肘張らずに気軽にお読みいただけるエッセイ集です。 まず「はじめに」から、書店での立ち読み気分をお味わいください。 はじめに 小粋な蕎麦屋に入って、いきなり「天婦羅そばを一つ」なんて注文するのは、いただけませんな。まあ、うどん屋に入ったわけじゃないのだから、蕎麦屋に入ってそばを注文して何が悪いということになるのでしょうけれど。しかし、もしあなたが「そば通」と呼ばれたいのなら、そして真の「酒飲み」と呼ばれたいのなら、カウンターに座ってまずは厨房からこちらの様子を眼光鋭くうかがういかにも頑固そうな店主の視線を浴びながらも、店の雰囲気をしばし味わうようなそぶりを見せてから、おもむろにこのように言ってみたいもの。 「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」 そんな古き良き時代の蕎麦屋の流儀なるものについて書かれた本を、書店で目にしたことがありました。私がまだ高校に上がったばかりのころだったでしょうか。 ほぉ~、蕎麦屋とは、まず酒を飲むところだというのか。俺もやがて蕎麦屋へ入ることがあったら、そんなセリフを吐いてみたいものだと思ったものでした。 ・・・あれから五十年、何の因果か製麺業を営むことになった私は、その蕎麦屋へそばを納めに行っては、「毎度ありがとうございます。今日から新そばで打ってあります」などと言うことはあっても、「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」などと言ったためしが久しくなかったことに今さらながら気づき、失望に打ちひしがれています。 日々仕事に追われながらも、いつかきっとそんな至高の悦楽を味わうことができる日の来ることを夢見て、「酒」と「そば」のうんちくを秘かに温めていると、驚いたことにこれはこれで楽しいではありませんか。 そのささやかな楽しみの一端を披露して、世の酒好き、そば好きといわれる皆さんと喜びを分かち合うことができれば幸せと、ペンを執った次第です。 「酒」と「そば」、二編に分けてご紹介していきましょう。 まずは「酒」編より、人は何故酒を飲むのでしょうか? 第一部「酒」編 「過ぎたるは及ばざるがごとし」 古来より「酒は百薬の長」といいます。実にいい響きを持ったことばですな。私は常々この心地良い響きを妻に言って聞かせるのですが、妻は私にこう言うではありませんか。 「あら、そういうものですか。では『過ぎたるはなお及ばざるがごとし』って、どのように響きになって?」と。 このほど世界保健機関(WHO)が発表したところによると、2016年に世界で死亡した人のうち約三百万人が、飲酒関連が原因と考えられるということです。「酒は百薬の長」とも語り継がれているのに、これほど多くの人が、飲酒が原因で命を落としているということは、これはやはり飲み過ぎたから、ということになるのでしょうか。 大雑把な計算になりますが、世界の人口を約七十億として、アルコールを摂取する人の数を約半数と考えれば、35億。 3,000,000 ÷ 3,500,000,000 = 0.086% という計算になりますから、なんだ、酒飲みの千人のうちの一人以下じゃないかと胸を撫で下ろした愛飲家の方、多いのではないでしょうか? しかしながら、どうしても気になるのは、どれだけ飲めば「過ぎたる組」になるのかということ。WHOの定義によれば、大量機会飲酒とは純アルコール換算で60グラム以上の飲酒機会を30日に一回以上持つことと書いてあります。そこで早速調べてみました。エチルアルコールの密度は、0.789g/ml ですから、 60 ÷ 0.789 = 76 ml、ビールのアルコール度数は、概ね5%と考えれば、 76 ÷ 5% = 1,520mlビール大瓶(633ml)二本半という計算になります。同様に清酒のアルコール度数を15%として計算すると、2.8合。 すなわちビールなら三本、清酒なら三合をひと月に一回でも飲む機会があれば、WHOは大量機会飲酒と定めているということになります。 確かにわが国はWHOに加盟しているかもしれないが、私個人はWHOになど加盟していないと主張する人もいるでしょう。見上げた心意気と拍手喝采を送りたいところではありますが、清酒三合以上を飲んだ翌朝のことを常々経験している者からすれば、やはりそうであったかとうなだれるしかありませんね。 あなたはうなだれる口ですか、それとも清酒三合ぐらいではうなだれませんと豪語する口ですか? う~む、古来より語り継がれてきたことわざ「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」とは、なるほど深い含蓄のあることばだと認めざるを得ません。 飲ん兵衛な製麺会社社長が綴る、クスっと笑える蘊蓄(うんちく)が満載。 酒の文化や歴史、あらゆる種類の「○○そば」の由来、偉人の逸話に至るまで。 世の酒好きとそば好きに贈ります。日本人たるもの、これを知らなきゃはじまらない。 ぜひご一読いただければ幸いに存じます。 にほんブログ村 FC2ブログランキング 人気ブログランキング PINGOO! ノンジャンル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年08月25日 07時08分08秒
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