遊遊漢字学が楽しみ♪PART16「破天荒」
毎週日曜日のお楽しみ、漢字学者阿辻哲次氏投稿による日経連載「遊遊漢字学」。さて、今回阿辻先生が取り上げた漢字は「破天荒」。いかにも中国ならではの深い由来のある漢字のように思われます。「破天荒」を辞典で調べると、前人のなしえなかったことを初めてすること。また、そのさま。前代未聞。未曽有(みぞう)とありましたが・・・。阿辻先生の説明によれば、敦煌の莫高窟で有名な唐代の甘粛省を含む一帯は、あたり一面どこまでも広がる荒漠とした大地、それこそ草木一本生えぬ荒野。この不毛の大地のことを当時「天荒」と呼んだということです。「天荒」にはもうひとつ別の意味もあって、こちらの方がいかにも中国らしくて、興味深いものがあります。それは、この甘粛省一帯の地は、かねてより優秀な人材がまったく現れたことのない地で、唐の時代まで人材登用制度「科挙」の試験にだれ一人合格者を輩出したことがなかったということです。すなわち、天候ばかりでなく人材にも荒んだ地、それが「天荒」であると。ところが、この地出身の劉蛻(りゅうぜい)という男が優秀な成績で科挙の試験に合格し、中央政府の「進士」となった。「天荒」の地からもついにそれを破る男が現れた。ゆえにこれを「破天荒」というと。現代において、「前代未聞」とか「驚くべき」という意味で使われているのは、「前人のなしえなかったことを初めてすること」という本来の意味からすれば、正しい使い方ではないというご指摘でした。・・・なるほど、ではこういう使い方をすればいいのですね。「破天荒」という言葉に相応しい時事ニュースが報じられています。日本の陸上短距離界は、優秀な逸材がなかなか出てこない「天荒」の地だったと呼べたかもしれません。しかし、ついにそれを破る劉蛻(りゅうぜい)のごとき男が出現した。ウエブニュースより、桐生祥秀9秒98 日本人で初の9秒台 男子100メートル桐生選手の快挙を「破天荒」という言葉とともに祝福したいと思います。◆酒そば本舗トップページへ◆**貴方の共感できる生き方がきっとある**にほんブログ村