「あやまちの医者」
以前ちょっと驚くユニークな富山弁「チンチンボンボ」の紹介をさせていただいたことがありました。「肩車」のことだと言われてみれば、後半の「ボンボ」はどうにか「おんぶ」のことだと気付きますが、前半の「チンチン」は普通この国では、どう考えても男性器の幼児語のこととしか思えませんね。さらに「(お)ちんちんかいとられ」にいたっては、どうして「行儀よくしていなさい」になるのか、人前で(人前でなくとも)文字どおりそんな行動をすれば行儀がいいとはとても言えません。(笑!これは我が故郷富山県の品位に関わる問題ですから、ぜひ説明しておかねばなりませんね。富山県西部の山間地方では「正座」のことを「おつくわい」と言い、「正座をする」は「おつくわいをかく」となります。また神々が鎮まりとどまっていることを「鎮座する」と言いますね。実は「(お)ちんちんかいとられ」には、「正座をしてかしこまっていなさい」という意味合いから、「行儀よくしていなさい」ということになるのです。いずれにしても大人同士の間で交わされる言葉ではなく、幼児(せいぜい10歳未満か?)に対して大人(老人)が使う言葉のようです。子供の振る舞いを神々の存在をにおわしていましめる、当地ならではの味わい深い方言です。この際もうひとつこの土地の老人が使う味わい深い方言をご紹介しておきましょう。みなさん、「あやまちの医者」をご存知か?「えっ?過ちの医者って、そんな医者にかかりたくない」ですって?・・・ごもっとも!(笑!このままでは、富山県にはまともな医者はいないのかと思われそうですね。(苦笑!実を言うと「あやまち」とは、「過ち」ではなく「怪我」や「外傷」のことをいうのです。すなわち「あやまちの医者」とは柔道整復師のこと、「接骨院」の意味だったのです。打ち身をしたり捻挫をしたときなど、誰でも一度は「接骨院」のお世話になったことがおありでしょう。私が学生のころ都会から当地へ遊びに来ていた友人が、突然ぎっくり腰になってしまったことがありました。私の祖母が、「直ぐに"あやまちの医者"へ連れて行ってあげられ。電気かけてもろたら、楽になっちゃ。」と私に言ったところ、友人は苦痛にゆがんだ表情にさらに恐怖の影を浮かべながら、「あ、あ、過ちの医者!?・・・で、で、電気!?」と、震え出したではありませんか。(電気とは低周波治療器のことです・・・笑!)そのあやまちの医者の治療が終わってから、友人は「過ちの医者に連れて行かれて、電気を流されたら、本当に死んでしまう。・・・んっ?なるほど死んでしまえば楽になるに違いないな。でも、なんと怖いことを言う婆さんだと思った」と、私に告白したものでした。「あやまちの医者」、ちょっと驚くユニークな富山弁 PART2でした。◆酒そば本舗トップページへ◆