目先のメリットか、未来への投資か
たとえばひとつの問題。まったく同じ間取り・企画の住宅、A・Bがあるとして。Aが1,200万円、Bが1,500万円で、性能や住み心地にそれほど差がなかったとしたら、どちらを選択するか?この条件だけで考えるとしたら通常、Aを選択するだろう。けれど、その選択が本当に正しいのかどうか、買い物をする私たちにとってその消費行動が、本当に良いことなのかどうか。もう少し、掘り下げて考えてみる必要はないだろうか?安さの理由が、正当なコストダウンの結果だとしたら、なんの問題もないはず。でも、たとえばもしそれがコストダウンを追求した結果、景観や街並み、安全をないがしろにしたり、目先のコストは安くても、肝心な耐久性についてさほど考慮しなかった物件だったとしたら?その選択によって私たちは、安いものを買う、という私的な目的とか、小さな目的は達成することができたかもしれない。けれどそれを、長い時間軸で捉えてみたとき。そのコストパフォーマンスは、大きな損失といえないだろうか。私たちは「目先」にメリットを集約させた代償として、大切な「未来」を犠牲にしてしまったのかもしれない。私たちは今、私たち自身にとって本当に良いこと、幸福な状態とは何か、次世代に夢や希望を受け継ぐ責任とは何か、もっと考えてみたい。本当の意味での豊かな社会は、誰かが創ってくれるものでもなく、私たちひとりひとりの手で、創りあげていくものだから。私たちさくら事務所が、一番お伝えしたいメッセージはここに。(『住宅購入学入門-いま、何を買わないか』長嶋修 講談社+α新書)この本が、「住まい」をとおしたあなたらしい幸せの最適解について、あなた自身で導き出す道しるべとなることを、心から願いつつ。■このお方の、ズレズレなる名(迷)言■本日は上記新刊から一言。住宅が人にとって幸福をもたらすものになれば、皆が幸福になれるはず。そしてその思想が、次に続く世代にも連綿と受け継がれていくとしたら、それほど素晴らしいことはないと考えているのです。