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カテゴリ:旅とキャンプとアウトドア
アメリカに越してくる10年ほど前までは、
毎週のように東京の郊外、奥多摩の清流でカヤックを楽しんだ。 春先から秋も深まるあたりまで、季節の移りゆく様を眺めながら、 渓谷の美しさを味わったものである。 カヤックとの初めての出会いはかれこれ20年近くも前になる。 ある10月の肌寒い日曜日、埼玉・秩父の長瀞というところでおこなわれたカヌー教室に参加したのだった。 はじめてのった一人乗りのカヤックはとても不安定で、おっかなびっくりパドルを動かした。静かな流れの上をぽちゃん、ぽちゃんと水音をさせて漕いで行く。なかなかまっすぐ前に進まなくて、腕が疲れたが、だんだんコントロールできるようになり、調子に乗った私はいつの間にか流れの早い瀬の近くまでいってしまい、あっというまに沈(ちん)したのである。 体の芯まで貫くような秋の冷たい川の水の洗礼を受けた私は、すっかりカヤックのとりこになった。 そのうち、何度かカヌー教室に参加。 そしてあるカヌークラブを紹介され、自分のカヤックもオーダーし、それから何年もの間、私はカヤックに夢中になった。 春先の、土手に咲く小さな花や、つくしを眺めながら、ゆったりとパドルを動かした春の川下り。背中に受けるぽかぽかした日だまりがとても気持よかった。 夏の清流はすがすがしく、力強く、目に飛び込んでくる緑がとてもまぶしかった。夕暮れのひぐらしの声を聞きながら、川べりをカヤックをかついで歩いたときの心地よい疲れ。 野原が金色に染まる秋。たき火の煙が立ち上る。 柿がたわわに実ったさまを遠く眺めながら、すこしもの哀しい気持で河原にたたずみ、川面を眺めた日の記憶。 最後の5-6年の日本での記憶は、カヤックに結びついているものが多い。 私にとってカヤックは、スポーツではなく、自然とたわむれる最も身近な方法だった。 アメリカに来て、ここでの暮らしを楽しんではいるけれど、時々無性に日本の四季が恋しくなる。そして目に浮かぶかなりの光景が、川面から見る眺めである事に気づく。 いつかまた日本に帰り、流れの緩やかな川をゆったり漕ぎながら、自然の匂いを胸いっぱい吸い込んでみたいと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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