シングル母のアメリカ暮らし

前回の話にちょっとした続きが出来た。
大した事ではないけれど。

私はケーキ男にまた出くわしたのだ。

木曜日の晩、子供たちをカブスカウトに連れて行き、
長男を待っている間、私は次男と遊んでいた。
建物内でかくれんぼをしたり、
本を読んだりしていたのだが、
ひょっこりと私たちがいた部屋の前をケーキ男が通り過ぎた。

おや、この間の男ではないか。
きっと彼も息子がいて、カブスカウトに連れて来たのだろう。
今まで会った覚えはないけど、あまり人のことよく見てない私。

そうしてかくれんぼでどこかに隠れてしまった次男を捜していると、
半暗がりのロビーで、彼が座っていたので挨拶をした。
「Hi. How are you?」
チラ、と顔を上げた男は私の顔を見て「Fine」とひとこと、
ニコリともせずにすぐにまた本に目を落とした。

ななな、何だ！？この態度は？
私の事を覚えていないのか。
気がつかないのか。それとも知った上でこうなのか。
だいたい、つい数日前に２時間は一緒に膝をつき合わしたんだぞ。
しかもその場にいた大人はたったの６人。
覚えていないとしたら、アタマ悪すぎ。
仮に覚えていなかったとしても、この態度は何だ。
人から挨拶されてきちんと挨拶を返しなさいと親に教わらなかったのか？
何にしろ、非常に失礼な態度なのだ。
しかも一応同じ教会に所属している訳だし（地区は違うけど）
もうすこしくらいの親近感を見せたってバチはあたらないだろうが。

それとも、ま、ま、まさか、あなた、
私があなたに気があるとでも思って、警戒していらっしゃるとか？
ふざけるんじゃないでございますわよ。
どちらかといえば、メロンおっぱいとさくさくしてた
アタマ軽やかバンジョー男の方が私の好みだ。
いずれにしてもどちらにも色目光線を送った覚えは断じてない。

でもこの人はこの人で、楽しい話をいっぱいしてたし、
明るくほがらかで感じのいい人だったのだ。
それが何？今日のこの態度。
これはきっと世に言う「お天気屋」に違いない。


夕べうちに友人が数人来てくれて、
夜中の2時までおしゃべりに興じた。

彼女たちにこの話をしたところ、
「けっこうさー、アメリカ人に多くない？そういう人」
と言っていた。彼女の回りにはよくいるそうだ。
私にはよくわからないけど、日本にもこういう人は時々いたような気がする。
それこそ男でも女でも。

人間誰でも気分の悪い時、体調の悪い時、
何となく人と話したくない時、というのはあるものだが、
一人前の大人なら、そういう時でも挨拶くらいはきちんと返さないだろうか。
そういうギャップの激しい人は結構苦手だ。
けっこうこちらも気を使わなければいけないし。


その後ケーキ男は目障りなほど、回りをうろうろし始めたのだ。
私と次男が遊んでいると、スーっと横を通り過ぎ、
５分もしないうちにまた戻っていく。（トイレの方向ではない）
そんなことが何回も繰り返され、
時にはにこにこと次男に「目が回っちゃうぞー」と声をかけ、
私は眉間に皺を寄せたまま、苦笑いを返した。


ほんとうに訳の分からない男だ。


という訳でみなさん、
やっぱりこの男がケーキにつられたと言う皆さんの仮説は
「大ハズレ」とさせていただきます。

ね、だからそう言ったでしょ？