シングル母のアメリカ暮らし

はじめに断っておくがこの日記は
毛のない人を笑い者にしているのではない。
私もこの２－３年急に髪が薄くなった。
シャンプーをするたびに両の手にごそっと抜け毛が絡み付く。
毎日あんなに抜けているのになぜなくならないのかが不思議だ。
ストレスもあるのだろうが、日本に帰って久しぶりの母と会うたび、
どんどん頭皮があらわになってきているのを見て愕然とする思いである。
しかし、女性の場合かなり年がいってからそれがやってくるのに対して、
男性の場合は早いと２０代から始まる。
当人にとっては深刻な悩みだ。
書こうかどうしようか迷ったが、
そんな男性にエールを送りたいと思ったのである。




人の毛というものはカラダの弱いところを保護するためにあると言う。
それならば毛が抜けて頭皮が無防備になったら危険だろう。
カラダが危険にさらされるのである。
健康上の問題となるのだからこれが病気でなくて何であろう。


それならば、今ある毛をうんと長くしてぐるぐると巻きながら、
ないところにピンで止めて、などと考える事もできるが、
これではアタマを保護することはできても、見た目に大きな問題が残る。
人間の生存目的である繁殖活動に差し支えが出ては困るのだ。


ならば、どうするか。
症状別に見て考えたいと思う。


まずこの症状には主に３つのパターンがある。
頭のてっぺんから欠損が始まる「ザビエル型」、
額全域から後退の始まる「落ち武者型」、
そして額の両はじから攻めて行く「エム・マック型」である。


ところで誤解のないように言っておくが
私はかなり毛髪の軽やかな人が好きだ。
過去につき合った人でフサフサだった人など、
大人になってからはひとりもいない。
若くしてもうすでに将来の姿が見通せるほどの人ばかりだった。
一度など見事な「ザビエル型」とおつきあいした事がある。
とてもいい人で私は大好きだった。
一緒にそば屋に入り、向かい合わせに座って
一心にそばをすする彼のてっぺんを見つめていたら、
じわじわと愛しさがこみあげてきた。
薄い人は時として女心をくすぐるのだ。
私の友人は彼の事を「特出し」などとひどい事を言っていたが、
それを慈しむ女性だっているのだ。
ただ少数派ではあるかもしれない。
（ちなみにこの友人は私の事を「無類のハゲ好き」といいふらしていた）


ところでもしご自分の症状に悩んでいる方がここにいたとして、
世の中の多数派にアピールするため、
そんなあなたに今すぐししてもらいたいこと、
それは、


１. 今日にでも床屋に行く

特にザビエル型、落ち武者型は髪を伸ばす事により、
そのコントラストがますます際立ってくるので、
今すぐ髪を短く刈り込み、ボーダーラインを曖昧にする事である。
時々何を思ってか長く伸ばしている人がいるが、
あまりにもインパクトが強すぎる。
よほどキャラが濃い人以外は刈り込んだ方がいい。
頭の形に自信のある人ならスキンヘッズも悪くない。
最近はつるん、と見事に剃っている人が多い。
素敵なことだ。（うっとり）
ただし頭の大きい人や絶壁くんはやめた方が無難だ。
エム型に関しては症状が進んでいない段階では、
特に床屋の心配はしなくてもいいかもしれないが、
エム型も進行すると落ち武者型と見分けがつかなくなるので、
早め早めの対処を望みたい。


次に大事な事は、


２. 適正な運動とダイエット

である。
こんなことは私にだけは言われたくない人も多いに違いない。
でも私には毛髪がある。
運動で抜けた毛が戻る事はないが、
少しでも見た目の向上に役立たせるためである。
髪を短く刈り込むと、うなじがあらわになる。
男のうなじは手と同じくらいのセックスアピールポイントである。
ここにむりんと肉がついているとせっかくヘアを刈り込んでも
セクシー度アップにはつながらない。
スッキリしたうなじから筋肉質の肩へとつながるそのあたりに、
うっとりと吸い寄せられる女性も多い事だろう。


３. 胸を張ってひとめに晒す

これは遺伝性のものだし、恥ずかしい事でもなんでもない。
髪を短く、または自分が似合うと思う髪型でも何でも、
とにかく隠さない、という事が大切である。
帽子（これはファッションではあるが、
脱いだ時に人に衝撃を与えかねない）や
ア◯ランス（広告が何を言おうとわかる人にはわかってしまう）
で患部を隠そうとしない事。
特に落ち武者型に多い「毛のやりくり」などは言語道断である。
隠さない、この爽やかさな姿勢が女性に受けるのだ。


４. 努力を怠らない

食事療法（海藻を多くとるなど）や
医薬外品を使って患部をマッサージする方法などは、
一朝一夕には効果があらわれないかもしれない。
が、常に手入れを怠らない、カラダをケアするその姿勢が大事なのである。
ぜひとも続けてもらいたい。
しかし隠密裏に、人には決して知られずに行動する事が肝心だ。



すべての悩んでいる人に自信を持ってもらいたい。
ちっとも可笑しいことなどではないのだ。
太っている、という事はコントロールできるが、
抜けていく、という事は自分でもどうしようもないことだ。
毎朝鏡にむかって、「セクシーな俺」であるべく自分に暗示をかけよう。


白人系などは髪の薄い人がアジア系より多いらしい。
一般的に髪の薄い人の場合、まず間違いなく「胸毛が濃い」。
これは毛髪の有無にかかわらずホルモンの濃そうなラテン系にも多いが、
彼等はほぼ例外なく、ボタンを一つよけいに開けて
社会にフェロモンをまき散らしている。
そして傍らにはかなりの確率で、セクシーな女性がはりついているのだ。
彼らの未来は明るい。
そしてあなたにも明るい未来と笑顔がきっとやってくる。



追記：これは、二人の息子に捧げるべく書かれたものである。
本日彼等の伸びきった髪を見て考え込んでしまった。
遺伝的にいって息子たちの毛髪に未来はない。
母方の祖父（私の父）は
「エム・ザビエル混合型パイナップル風味」だったし、
しかも若年性だ。
父方の祖父（元夫の父）は完璧な「落ち武者型」である。
母としてはできるだけ発症を遅らせるために、
現在せっせと海苔を与えている。
それでも避けられない運命のもとにその日がやって来たら、
きっぱりと長男には「丸刈り」にするようすすめるつもりだ。
彼は丸い頭をしているので問題はない。
問題は絶壁くんの次男だ。
彼にも明るい未来が来るように、母として努力を続けたい。