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居酒屋こはる

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2010年02月03日
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カテゴリ:徒然

今日は好きな本の話

私が 本や作者さんを「好きだなぁ~」と想う時

いえ

本、というより 文章 そこに書かれたモノを

「好きだなぁ~」と想う時

それは文体が好きだ、という事が多い

どこが、どう という事は言えないのだけれど・・・

 

石牟礼道子さん

Wikipediaには出てこないのだけれど

著作で好きなモノがある

葛のしとね

これは新聞掲載のエッセイや、講演録を納めたものなのだけれど

文章が本当に 心にシンと沁みとおるような気がして

好きな本の一つです

アマ〇ンでも在庫が無くて

でも図書館にはあったので全ページコピーしようかと思った程好きな本でした 

 何処だったかなぁ~

古書を扱うお店で(ネットで)購入しました

それが、どこの何というお店なのか

覚えていないし、記録もしていない・・・

すみません 覚えていたら少しは皆様のお役に立てたのに、ね

 

石牟礼さんは ご存じのように「水俣病」と深く関わりをもって来られた方です

過去 何十年にも渡り そして今も・・・

苦海浄土 わが水俣病

石牟礼さんは 葛のしとね の中でこんな風に語られています

以下 引用

最初の供儀となった人たちのうち、生き残ったものたちが

その後三十有余年、死にゆくわが身とひき替えに発し続けてきた

深々とした声の意味を、この列島はしかと聞きとめえませんでした。

中央から離れた一地方の、やがては歳月の中に

自壊してみえなくなる事態だと

自壊を促す遠隔操作だけが、以心伝心の指先でなされてきました

引用 終わり

 

具体的な内容を掲げた訳ではないけれど

そこには 犠牲となった方々の 声にならない叫びを聞きとめ

書き記す事を そして後世に残す事を使命と定めた人の

静かな でも 確固とした信念を感じ

強く感銘を受けました

 

そもそも、この「苦海浄土」を読んだのは中学生の頃でした

衝撃でした

ただ、その頃の私は

自身が受けた衝撃を 言葉として発する力を

まだ 持ち合わせていなかったので 自分の中に納め

に向けて発する事はありませんでした

それから30数年経って

ようやく

静かに ゆっくりと その出来事の意味を考えられるようになりました

 

石牟礼さんは また

破壊されゆく自然の事を こんな風に語っています

 

以下 引用

掌の秘境だった、わずか直径90メートルばかりの私の入江

ここにいた小さなものたちは、入江と土手の水門を

つい最近までゆき来していたのです

潮が干いた間、入江の葭の根元で遊んでいて

次の満潮に乗って帰ったりしておりました

風にそよぎはじめる葭の葉っぱの上で

夕映え色の目になって、茜の海にジャンプしてゆく

小さな飛びハゼたちの姿を

屈みこんでみているひととき、私は太古からの

宇宙の荘厳に向き合っているのだと思っていたものです

アスファルトの土手道で、なぜこのハゼたちは

車に轢かれ続けたのでしょう

葭の上から波の中にジャンプすることができても

水門の調節がきかなくて海に出られなかったのか

干潟の上から葭の葉っぱに飛び乗るとき

乗りそこねる姿を、私は一匹もみたことがありません

コンクリートの土手道を干潟と勘違いしたか

探検に出ようとしたのか

いずれにしろ、そこを通らなければ海に戻れない

彼らの渚道だったのです

中略

そうではなくて

渚とは 気配たちの賑わいに満ちているところでした

それは かそけき賑わいで、車たちに聞こえるはずもありません

心の時代と銘打って

心のうちさえも拡声器にかけずばやまぬ風潮ですから

 

引用 終わり

 

石牟礼さんのこの文章を読むたびに

原初の海

という言葉が 胸に蘇ります

静かな 気配に満ちた かの人の渚

もう全て 失われてしまったのだろうか

まだ、、ほんの少しでも残っているのなら

私はそこを訪ねたい

訪ねて 石牟礼さんのお話を

聞いてみたいと 思っている






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最終更新日  2010年02月04日 08時14分31秒
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