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2023.09.01
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カテゴリ:読んだ本いろいろ



『ハムレット』のヒロイン、オフィーリア。

父王謀殺の復讐せんがために

猜疑心にとらわれ狂気をよそおうハムレットに

つらくあたられた上に

(誤解からくる不運で)父親の宰相ポローニアスをころされた

ショックで

正気をうしなった彼女は、王城からぬけだして

野をさまよったあげく、

川におちて落命します。

野の花できれいな花環をつくり、花環を枝にかけようと

川べりの樹によじ登ったとたん、枝は折れ、

花環とともに川におち、しばらくは古い歌をくちずさんで

水の精のようにただよっていたものが、

やがて川底に引きずり込まれて儚くなった・・・


哀切な場面で、

ラファエル前派はじめ19世紀の多くの画家が好んで

題材としたのもうなずけるのですが、


意外にもこの場面、

シェイクスピアの原作では

ガートルード妃の言葉として語られるだけで、

劇中には登場しないのだとか。

オフィーリア画

の最高峰であるミレイの傑作はじめ、

画家たちが心血そそいだ名作

を集大成したら、圧巻の画集になりそうです。

もし出版されているのをご存じのかたいらっしゃれば

どうかぜひ、ご教示こうしだいでございます。

ミレイのオフィーリア。


アーサー・ヒューズのオフィーリア。

水はにごり、咲く花もなく・・・

ゴシック・ホラーのように不気味で奇怪なムード。

これもアーサー・ヒューズ。

同じ人が描いたのに、

表現がまるで異なりますね。

草冠で着衣に草花がからみつき、

どこか焦点のさだまらぬまなざし、

この世の者ならぬうつくしさ。

ジョージ・フレデリック・ウォッツ

のオフィーリア。

すでに現世の人ではない端境の狂気の美

とでもいうものが、画家たちをとらえたのでしょうか。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス

のオフィーリア。


ポール・ステックの

水底にしずむオフィーリア。

水と野辺の花と乙女。

悲しみのあまり心壊れてしまい

涙も苦しみもない死の国へと運ばれていった乙女

は、もはや俗世の人ではなくそのはかなさ、

清らかさ美しさも水の妖精のようです。

凄いインスピレーションとなり

芸術家たちのイメージをふくらませたことでしょう。

思えば、万物の源は、『水』。

ヒトふくめあらゆる生命は『水』なくては生きられない、

変幻自在でとらえられない魅力ある

反面、水害や水難のおそろしい側面もある。


『水』の不思議と神秘が、古来

マーメイドやニンフ、ローレライ等

数えるにいとまないほど

この世ならぬ美しい女性に擬せられてきたこともまた偶然ではなさそう。


ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス

の『ミランダ』。

やはりシェイクスピアの『テンペスト』のヒロイン

ですが、

画に難破船がなければ(これも、オフィーリアかな?)

と(私なら)思い込んでしまいそうです。


エドマンド・デュラックの『ミランダ』。

おとめの、まなざしにうつるのはなに?


おなじくデュラックの『テンペスト』の挿絵。

水にたわむれる妖精たち。

アーサー・ラッカムの『ウンディーネ』。

別離の悲しみをこらえて水底の国へかえってゆくウンディーネ。


・・・9月になりましたが

いましばらく酷暑はつづく予報なのだそうで。

『水の乙女』

のイメージで、かすかにでも納涼

になれば、とてもうれしいです😊。

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Last updated  2023.09.03 10:02:43
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