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カテゴリ:うまいもんを食べた
その店ではいつもカウンターに座る。
おやじの料理と向き合う姿や材料が変化するのを「見学」できるから。 人より遅れてお盆休みを取ってお店復活、どうもこの「復活」時期を狙ってくる人たちってのもいるみたい。 会津出身のシェフが手ぶらで帰京するわけないじゃない。 これは!という食材を自家用車に積んでカウンターの向こう側でああしてこうして「んめもん」にしてお皿にのっけて目の前に出してくれるのだから、やっぱりいつもとは違うのだ。 「今年は暑すぎるからねー、持ってきたシシタケ(こうたけの別称)店の前にちょっと出して干したりできなくて」 それでも、この時期はぜったい「何か」あると信じて狙って来店する人は後をたたないらしい。シシタケ表に出してなくても。 お客さんが来るまえに、シェフは何かもぐもぐしてた。 「これだよ。だだちゃ豆」 アルバイトしていた子が送ってくれたんだそう。 これから仕事に入る。だだちゃ豆の皿は我々が引きついだ。 狙ってくる人々は家族連れから仕事の打ち合わせかデートまで。カウンターで背中向けてても彼らが微妙な「鼻濁音」交じりで会話できるのくらい、聞き取れる。向こうの席では方言談義がはづまった。何か一言言ってみてはガハハ!である。普段使えず頭の中にしまってあることばをここでなら普通に使っても「え?」と聞き返されない。「ガハハ!」はその開放感に対する笑いの反応かと思われる。中央線沿いにあるのにここはカルチェラタンみたいな「東北区」なのだ。 「今日は何あるの?」 まんづ食材について確認。 「シシタケはリゾットにするからねー」(お、ひとつ決定。) 「それから、ユウガオも持ってきたよ。今年は暑かったからか実があんまり大きくないね。これはパスタにするから」(おお、それもいきましょう!) じゃあ、その二品だけ決めてあとはお任せで。 そのほうがスリルがあるし。 我々(複数形)は酒を持ち込みしている。 シェフ公認。なぜか。 おたがいあっちこっち行って来たらその「成果」をなぜかここで共有して(もとい、飲んで)遊ぶということにしたのだ。シェフも酒に関してかなり「どっからでもきなさい!」という知識・経験の持ち主。それをあえて薀蓄しない控えめさがまたわたしの好きなとこでもある。 そんなわけで、混雑してこない頃合を見てカウンターの向こうとこっちで瓶が行きかうようになる。 今回のこっち側のタマは北海道「男山」古酒3年と山形・庄内の粕取り焼酎「樽平」10年もの40度。そんなら、とシェフが出してきたのは会津の地元で愛されてるとおぼしき「からくち」(いかん、銘柄を忘れた)。そののち会津の「男山」の粕取焼酎。(ほんとにイタリアンかよ。ここ。) 何を隠そう、粕取り焼酎の存在をきちんと知ったのはこの店でだった。奥深いもんだなあ。といろんな地方にいって(いろんな、って最近とうほぐばっかだが)は酒屋に飛び込み「すんません、粕取りありますか!?」とやっては怪訝な顔されたり「あんだ、わがってんねぇ」といわれたり。 「東北区」内「カストリ研究会」なのだった。 お、アンティパストだ。 たこのぶつ切りセビッチェ風・じゃがいものサラダ・イカげそのカレー風味マリネ・ブロッコリーのマリネ・いわしのマリネ・生ハムといちじく。 ここで「男山」をあける。 おお、日本酒とも合うねー。 そのうちユウガオのなんともいえない食感+アラビアータのソースのパスタ。こんなふうにユウガオ食べられるとは。 リゾットのあいまになぜか!「日本酒にはこれでしょう」と青じそ入りキンピラゴボウ。ささがきが細かくてきれい。包丁、といでるね。ちょっと辛いのはピザ食べるときに出てくるとんがらし油か。またもや日本酒すすむ。「白いご飯ないのぉ」あるわけないでしょ。 リゾットができつつある。シシタケもといコウタケのかほりがいい。炊きこみごはんがたまらんのだから、リゾットもかくやと思われる。 なんだか懐かしい味がする。 シェフのいたずらっぽい得意そうな顔。 「わかる?油揚げとゴボウのソースなんだよ」 ああ、そうかぁ。炊きこみごはんそのものじゃないのー。 後味が油揚げ。香りはゴボウ。 やっぱり看板変えよう! だんだんお客さんふえてきた。 みなどこかでお盆してきたはずなのに、もうここへ来て何か食べてしまう。奥へ入った家族連れ「さっき食べてきたからケーキとかちょっとしかはいらない・・」などといってたのに酒入ったらもう「リゾットふたつ」・・それからピザまで。そうこなくっちゃ(笑) そのうち「樽平」もあけてしまう。 う、酒かすの味! 酒かすは苦手だけど、焼酎になると許せる。 アルバイト青年も一緒に飲んでいる。 「おれ、よっぱらっちゃいますよー」だが、なかなか忙しい。 シェフに「アルバイトの採用条件」をきいてみた。 「え、条件?”訛れること”だね」 なるほど。とうほぐでなければいけないのだ。こりゃ後から鍛えたって無理だもんね。キビシイ。 確かに、今まで聞いた人々の出身地・・・櫛引町、八戸、仙台市青葉区、名取、鼠ヶ関・・・数え切れない「北の土地」の名前。 それでも彼はやっぱり会津命らしい。 「え、”福島産”じゃなくて”会津産”ていうのよ」食材の出身地にも訂正が入る。冗談混じりではあるが、ココロはマジだぜきっと。 それにひかれて北緯38度以北のお客さんが鼻濁音を響かせつつしっかり食べて帰るのだった。そんなことしてわたしも10年以上たつかなぁ。 正月も休まない。 「ここの常連だったひとが地元に帰ってきてどこもあいてないんじゃいけないし」と正月返上でお鍋と向き合う。常連さんが見かねておせち料理のお重を差し入れたりする。それをちょっとつまみながら仕込みしているらしい。 ソルダムのジェラート、のちコーヒー。 締めはわたしの持込、秋田の「酒ケーキ」。 最後まで酒のかほりだらけのコースであった。 もちろん、西や南のお客さんもきてるのよ。 でもね。比率でいうと・・・。「東北区」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Aug 23, 2004 10:34:14 PM
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