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カテゴリ:面白いもんに出会った
ほんとうは相性悪いだろうなと思っている。
お互いストレートな表現をイキだと思っていないらしく、 腹芸だけで会話している。 この男の部署にいたときも、どうやって書いた文章に難癖つけさせずにOK出させるかに腐心した。 気に入られたいとかではなく、あくまで「この表現でイイ、 このまま行けって言え!」それだけを考えていたのだった。 部署を離れてから数年これという対立構造も発生せずお互い 平和にそれぞれの場所で働いていた。 それが。 わたしが5年ほどまえに「ハッセル500CM、買っちゃった♪」 とつぶやいてやったあたりから以前とは違う状況に進行した。 わたしの「買っちゃった♪じゅうさんまんごせんえんで! しかも美品!」のあとに、 この部長は「チキショー!」と叫んだ。 このひねくれもん還暦男からこんなストレートなお言葉をいただけるなんて。 いや、言わせてしまえたなんて。あぁ、うれしい。 今なら言える「ありがとう」と。 「チキショー!」の言外には (コイツにはまだアレをぶんまわして撮る時間も体力もありやがる。 ついでにオレが飲酒がまんしてやっとこさ3桁の現金ためて買ったアレをコイツはいともかんたんにじゅーさんまんごっせんえん♪なんかで手に入れやがった。 コイツにはオレほど金ないだろうが勝手に使える金額はオレよかあるかもしれん。 しかし体力も気力も時間もありそうだ。 チキショウ、うれしそうにいいやがって。生意気だ。でぇい) などというシルバーエイジ・クライシス(ごめん、ほかの言い方が 見つからない)だとか形のあるものないものの貯金残高など込みの複雑怪奇、わたしには思いつかぬことだらけ。 でも、彼は「チキショウ」のひとことで少なくまとめた。 さすが決裁者である。字余り・改行・文字つめなし。 しかしそれからといふもの、自分の決済で買いすぎて冷蔵庫のお荷物になっていた フィルムの有効的処分を依頼されたりひまがあれば「いいもんみせてやろう」 などとSWCをわっざわざわたしの部署まで起こしいただいて(頼んでないのに)さわらせてくれたり。 「いいですねー、これ!」 「そうだろう」 「さんぜんえんくらいなら私が買い取りますよ」 「ばかいってんじゃねぇよ、新品で買ったんだ」 「あきらめませんよ」 「ありえねぇ」 などといって部屋を去る。 それからは。 社内ですれ違うたびに 「レンズかびますよ、使わないと」 「乾燥剤入れてるから、いいんだよ!」 「やっぱり撮って使ってくれる人の傍にあったほうが・・」 「何がさんぜんえんだ!」 「そろそろ重荷なんじゃないですか?」 「墓場まで持ってくんだよ」 「あれ、遺言状に”全部わたしにさんぜんえんで譲渡す”って書いてたんじゃ?」 「まだ死ぬつもりはねぇよ」 「いやぁ、デジカメ買ったらよぉ、これがけっこういいレンズなんだよな」 「じゃあ、今までの”肥やし”はもういらないんですね!やっとわたしに下取りさせる気になったってことですよね」 「なーに、神棚にかざってありがたいありがたいって毎日やってんだよ」 「改宗するとき、いってくださいね」 「最近、モードラなんっすよ」 「あれってトロいじゃん。意味あんの」 「没頭できますよ、少なくとも」 「自分の手で巻き上げるのがイイんだよ~」 「わたし、手順フェチじゃないもので」 とまあ、何も知らぬ人々が聞いてもついぞわからぬ煙に巻かれる会話を数年くりかえしているのだった。 で、最近。 ちょっとキューバいってくるよって話をした。 かなりたってから、急に 「で、何ミリもってんだよ」 「え、80ミリ一本だけです」 「もってくか、オレの」 「え!でも湿気あるとこですよぉ」 これはかなり譲歩された展開の会話だ。 いままで人になんかレンズ貸す人じゃなかったからね。 ただ、借り物だと旅先でのあれこれが心配だ。 どっちかっていうと「下取り」希望なんだけど・・・。さんぜんえん、で。これを言うとまた、もとの会話に逆戻りなんだろうな。 そんなわけで、ハッセルブラッドを持ってるってだけでこれだけの長期にわたる心温まる会話ができるのだ。たいしたものである。私どもが、ではなくハッセルブラッドが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 19, 2004 08:33:38 PM
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