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ハバナからの帰り、どういうわけかイミグレーションでたくさんのおぢさんとお話をした。
一回目の(行きの)分の入国スタンプがなかったのだ。 なんでなかったかって、そんなの知らぬ。 「で、何日いるの」 「三日です」 「・・・・・・」 「あっちにも行ってね」 「はーい」 しかしそこは、あきらかにこれから何かここでオシゴトしたくて来た風体の人々だらけだ。 オイオイ、わたしはただヒコーキ待ちで二晩泊まるだけなのに。永久就職しようなんて思ってないよう。 えらそうな太ったおやじがえらそうに手招きする。 机の横にはダイエットコークの缶。 (いまさらそれに変えたって・・・) 「ふーん、あ、チケットみせて」 「はい」 「初めての入国なの」 「いえ、一週間ほど前に一度トランジットで」 「でもスタンプないよ」 「そんなの、知りません」 (おめぇの仲間がしくじったんだろが) 「三日間だけの滞在なの?」 「なんならホテルのバウチャーも見せますか!?」 「あ、それはいいから。・・・職業は?」 「実直な勤め人」 そこでおやじはパサポルテの写真と実物をしつこく比べ、スキャナでコピーをとり、しばし咳き込む。 ダイエットコークを喉に流し込む。 それからおもむろにべったんと判子を押し、3分くらいかけて一ヶ月の滞在期限をペン先がつぶれそうなくらいぐりぐりとゆっくり書く。 笑い出しそうなのをがまんする。 なんだ、こんなおやじのひまつぶしに付き合うのやだな。だんだん汗かいてくる。暖房がよく効いていてたまらん。 馬鹿丁寧なサインをやっとこさ終えたのち、ぽん、とこちらにそれをよこした。 「merci!」 もちろん嫌味で言っているつもり。 さーて、やれやれ。 税関申告書を出口で渡して、スーツケースを取りに。 拾い上げて出ようかなと思ったらさっきの馬鹿丁寧サインのせいで「あっちを通って」 またかい。オイ。 さっきのサインおやじのいたカウンターで一緒だった同胞たちもみなこっちの列へくる。 一番奥があいた。 「こっちへ!」 (面倒だなぁ、なるべくよい子にしないと) 「どっから着いたの」 「ハバナです」 「そうか、いいねぇ。休暇かい?」 「はい。」 「そんじゃー、かばんあけて。手荷物でいいから」 「えっと、これがさいふ。チケット。化粧品、それから」 「これを開けて」(とハッセルブラッド入りの袋を指す) 「これは撮影すみのフィルムとフィルム入ったままのカメラとマガジン・・」 「その奥は何がはいってるの」(といって手を入れる) 「あ、これもカメラ」 というか言わないかのうちに 「おぅ、キミいいの持ってるね。ハッセルブラッドじゃないか!」 「あら、ご存知なの。お好きですか」 (せっかくだから取り出して見せてあげることにする。う、重い) 「好きだよー。いいねえ、いつごろの型なの」 「多分10年以上前でしょうね」 「あ、もういいからねー。検査、おわり」 「merci!」 「はい、次の人こちらー」 ハッセルブラッドを見たらなぜか気が済んだらしくさきほどのような追求はなし。開いた荷物を片付けるのには3倍かかるのにな。 これで無事開放。ハッセルにちょっと救われる。 わたしの日本国旅券よりも効力を発揮したように思えてならない。微妙な気分。 えーい、金はかかるがこの寒さ。 連日30℃のハバナから来た体にはこたえる。 両替所で50EUROをカナダドルに換金。60+@くらいになる。 手数料をがっさりもっていかれる。理不尽なり。 金はかかるがタクシーだ。 一台いた。丸刈りのがっしりした兄ちゃん。 ホテル名と通りの名をつげるとすぐに出る。 灯りの多い道、でこぼこしない道路。 カルチャーショックは少ないけれど美しい街。 兄ちゃん、何か言葉を発する。 「どっから?」 「ハバナよ」 「国籍は?」 「日本」 「休暇で?」 「そうよ。ここはトランジットのつもりで2晩」 「なるほど。トロントは初めて?」 「うん。気温差がちょっとねぇ」 「そうか、じゃあダウンタウンに入るまで簡単にガイドするよ。俺の名前はICE、氷と同じ綴り」 「寒い国に似合う名前ねぇ」 「あはは、そうかも」 (彼はざっと何があるのか、見えるポイントごとにあれこれと教えてくれた) 「でっかい街よね」 「人口、すごいもの。ああ、あそこが野球のスタジアムだよ」 「野球は好き?」 「おれはヨーロピアンだからね、サッカーだよ」 「どっから来たの?」 「マケドニア。トロントの前はオーストラリアにいたんだ」 「何年くらいここに?」 「3年くらいかな」 「ここって欧州のコミュニティがたくさんあるよね」 「もちろん、日本のだってあるよ。はじめて国外で働く人にとって、同じ言葉で話す人がいる場所があるほうがいいし、そういう場所に人が集まるんだ」 「そりゃそうだわね」 「ところで・・。トロントに来た者はすべて、ナイアガラ瀑布を見なくちゃいけないんだぜ」 「え!そりゃ大変。出国のときに役人に訊かれるかしらん。”きみはナイアガラを見たか”って。パスポートに判子押してもらわなくっちゃ!」 「アッハッハ!」 「だって入国審査がうるさくてねぇ。ちょっと大変だったし」 「そうか。ま、時間があればナイアガラ行くときに呼んでくれよ。往復100ドルくらいだけどさ」 「・・・・・」黙っていると。 「そうだな、一番高いのがタクシー。二番目はグレイハウンド。でも一番安いのは普通の路線バスかな。これなら10ドル50セントで行ける」 (人のいいやつだなぁ。) なんだかんだいってるうちに、目的地。 「ありがとう、おかげで楽しい移動だった。あなたの国で”ありがと”ってどういうの」 「”FALA"だよ。こういう綴り・・・(とメモに書いてみせる)」 「そう、じゃあね、ありがとう。何だっけ・・”FALA"!ひとつ勉強しちゃった」 「FALA!」(なんだかちょっとうれしそう。) 彼はわたしがチェックインする寸前まで見ててくれ、手を振りながら走り去った。 タクシーの兄ちゃんは、ほとんどが移民だと思う。 乗るたびに新しい挨拶をひとつ、覚えられそうだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Dec 16, 2004 08:55:07 PM
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