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カテゴリ:カテゴリ未分類
先週、ピアノの調律を依頼した。
依頼先はセッションで知り合った調律師氏(as.)。 かれこれ12.3年のつきあいになる。 もうずっと、お願いするなら彼にしようと考えていたのに、実行せずにいた。 思い切って電話する。 「で、そのピアノ最後に調律したのは・・いつなの」 「うううん、20ねん・・くらいにはなるかな」 恐る恐る会話せざるをえないほどの年月だ。 「そのくらいになるとモノによっては部品が無いかもしれないけど、見に行くから」 忙しいさなかに時間を調整して、来てもらった。 しかし、彼が拙宅に現れる前にさらにオソロピー事実が判明。 掃除のためにアップライトの表の板を外したら、過去の調律記録カードが出てきた。 最後に調律したのは、「昭和53年」だった・・・ いくらなんでもにじゅーねんくらい、はサバ云いすぎではないか。 もーここはごめん!とあやまってお願いしようそうしよう。 さて、調律氏師登場。 いつもと違うぱりっとしたスーツ姿。 (スタジオでのセッションのときはもーちょいラフだもんね) 都心のコンサートホールでの仕事を2件こなしてきたのだというから、既にお疲れ なのではないだろうか。心配である。 今回はバンドのメンバーではなく、本職で接するのだからもう別の人。 いじられるピアノのかわりにあたしが緊張する。 おもむろに前板を外す。 彼らにとってはお約束らしい、調律記録カードのチェック。 「あれー、昭和53年って・・」 「げげ~、すみません~サバ云ってました~っ!」汗かきそう。 でも、彼の目はもっと別の記録にいっていた。 「僕、この人、知ってる」 「え?」 「この、最後にやった調律師さん。M楽器店にいたひとだもの。 このピアノM楽器店で買ったんでしょう」 「ああ、そういえばその店の名前・・小さい頃、よく楽譜買いに行ったから覚えてる」 大きな古木ばかりの並木通りにある、その店に行くのは結構好きだったのだ。 「僕ね、駆け出しの頃M楽器店から仕事初めてね。この人が辞めてしまったあとに、 調律リストの名簿引き継いだの。だからそのままM楽器店経由で調律やってたら、 このピアノもやることになってたんだよ」 「あー、ウチが引越したり、あたしが受験したりしてるうちに連絡途絶えてしまったのかも」 「そうだね、なんかの理由でリストから漏れちゃってたみたい」 「でも、結局すごーい時間経ってもスタジオセッション経由でこのピアノのお世話する ことになっちゃったのね!なんだか凄い話!」 「じゃあ、そろそろ中も見てみようかな」 ピアノの鍵盤とハンマーの間のアクションと呼ばれる部分を、そっと引き出す。 「ああー、やっぱり」 「え!」 「さっき弾いてみてわかってたんだけど、ここの糸切れてるでしょ。ほら」 「あら、ほんとうだ」 「ここでタッチの調整をしてるからね。弾いていて、ずっとへんだったんじゃない」 「そういえば大きな音しないなあって力入れて弾いてたよ、ずっと」 「この時期に作られたU3Gはここの部分が弱いらしくてさ、結構修理してきたんだ。 時間かかるけど、ここもやって帰るから。その前に調律して、と」 さすが28年間(しはんせーきより長いぜ)。 でも、まだ再生可能らしいのだ。 「このピアノなら、直せばずっと使えるから」 友人(この時間は調律師さま)のせりふが、カミサマのことばのように聞こえる。 工具をささっと取り出しお仕事開始。 もうそうなるとあたしは役立たずだから階下でお茶を飲み、パリ・ダカの総集編を観ていた。 たくさんのクルマやバイクやダンプカーが、細かい砂のやわらかい地面に巻き取られ、 ぼこぼこになっていった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 5, 2007 12:58:38 PM
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