【映画】「The Day after Tomorrow」を観て
先月になるが、「The Day after Tomorrow」をDVDで観た。約2年前にDVDが大々的に日本で販売され始めた頃からずーっと気になっていた。しかし、大々的なPRとは裏腹に、正直言って期待はずれの映画だった。期待が高かった分だけ、ガッカリした。 「地球温暖化」というテーマを映画化し、分かり易く表現しようとしているところは評価できる。しかし、ストーリーが雑で、乱暴だ。 まず、温暖化が原因で「氷河期」がやってくる、という課題設定が分かりにくい。映画の中での記者会見の場面でいみじくもある記者が質問しているが「なぜ温暖化が原因で、逆に氷河期になるのか?」という疑問は私たち観衆の誰もが持つ疑問である。確かに、専門家の間で実際にまた氷河期が来るという理論があるようだし、映画の中で「温暖化により北極の氷が解け、それが原因で太平洋、大西洋の海流に異常が生じ、地球が寒冷化する」と短く説明しているが、一般人にはピンと来ない説明だ。一般的には「温暖化によって海面が上昇し、無数の島が消滅する、日本を含む島国に住む人たちは住む土地を失う」という設定のほうがよほど分かり易いと思うが、大陸に住む米国人にピンとくるのは、ニューヨークが凍りつく寒冷化の方だったということだろうか。 また、温暖化というスケールの大きな課題を設定しておきながら、ストーリーは、周囲にたくさんの犠牲を払いながら息子を助けにニューヨークに行く、という傍若無人とも言える父親の行動が中心だ。多くの犠牲者たちはどうなったの?父親の行動に巻き込まれて死んでいった仲間たちは一体何だったの?といった疑問が一杯出てくる。 そして、父親が息子を発見した直後に、なぜか突然、寒冷化が止まり、地球は救われる。「は?一体何が起こって急に地球が助かったの?」という疑問だらけの結末だ。昨年「宇宙戦争」を観たが、あれと全く同じ印象だ。「は?あれ?」という感じだ。結末部分で地球を突然、劇的に救ったものは、「宇宙戦争」のときは「地球上の細菌」で、「ザ・デイ・アフター・トゥモロー」は「大気や海流」だった。いずれも、言うならば「地球の自浄作用」ということか。 もし地球の自浄作用、再生作用があるならば、最初から地球温暖化も寒冷化も問題でなく、地球のロングスパンの中での「小さな変化」にすぎない、ということであろう。これはまさしく、アンチ温暖化の人たちの考えだ。この点で、温暖化、寒冷化を主題とし、それが大変なことだという認識がベースになっている映画としては、矛盾しているように思う。 ところで、映画の中で、COPや京都議定書が皮肉られている。確かに、温暖化が科学者によって完全に理論的に証明されたわけではないし、人によっては、特に一部エコノミストは温暖化対策にかかるコストを嫌っている。しかし、やはり「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告以来、多くの科学者によって支持され、異常気象が多く発生し、温暖化を裏付けるデータが多く得られ、そして今アクションを起こさないと取り返しがつかなくなる可能性がある現状では、国際協調の下で地球規模の対策を行う必要があると思う。 私は以前、アラスカ、ヨーロッパ・アルプス、カナダのロッキー山脈などで氷河の上を歩いたが、各所で見た昔の氷河線との比較写真を見ると、氷河が急速に後退し、消滅しそうになっていることが実感される。 余談だが、1991年に竹下登元首相が座長を勤めて日本で開催した「地球環境賢人会議」や、1992年の地球サミットの頃がとても懐かしく思い出された。当時私は、民間の立場でこれらの会議を支援する仕事を少ししていた。そして京都プロトコルの時はその仕事から離れていたものの、個人的に注目し、その動きを追っていた。ロシアが議定書を批准し、発行が決まり、とても喜んだ。その一方で、米国の態度は気にくわない。 余談の余談であるが、「賢人会議」が開催された際に、「賢人」は英語で「eminent」(高貴な、著名なといった意味)という英単語が使われた。私はこの時初めてこの単語を知った。同義語としてよく使われる単語は、「Respected, distinguished, notable, outstanding」などだろう。あの時、「いろんな単語があるものだ。英語の勉強はほんと大変だ」と実感したが、その思いは今も続いている。