カテゴリ:行政書士
実は、平成17年初の書き込みです。「1月は行っちゃった、2月は逃げちゃった、3月は去っちゃった。」と言われますが、早いものです。
この間、ずっと昨年8月の行政書士法改正による行政書士法人制度についていろいろ考えを巡らせていました。 制度創設の趣旨は、規制緩和の急速な進行、行財政改革の進行、行政事務のIT化の進行、平成13年以降の弁護士を始めとする他士業の法人化法の成立が挙げられます。 つまり、規制緩和、行財政改革、行政事務のIT化により、「大企業」、「他士業」、「外国士業」、「無資格・モグリ」等が参入ないし乱入してくるので、行政書士事務所の形態を変えて、経営の安定化を図り、戦いに備えよという趣旨です。 私自身、平成16年8月の時点では、行政書士法人制度創設の意義を全く感じませんでしたし、今日でも偉い先生の間では、「何のための制度かわからない」という意見が多数です。 なぜならば、登録時に法人として入会金を払い、代表社員、社員、法人と3者分月会費を払うのがもったいない、個人事業主だと売上がそのまま自分に反映しますが、法人にすると役員報酬になって自分の手取りが減るという懸念があるからです。 しかし、ライブドアによる、平成16年9月の「税理士法人ライブドア」設立、11月の会計ソフトで有名な「弥生」買収には、大きな衝撃でした。 ライブドアは、会計ソフト販売→ユーザ登録→自家記帳→データ送信→集中会計処理→電子申告→電子納税というダイナミックなビジネスモデルを志向していくのでしょう。行政書士に置き換えれば、法人化により、行政書士資格と経営の分離が行われ、大資本投入、参入が可能になるのです。 さて、行政書士法人を設立するには、行政書士となる資格を有する者が最低2名必要です。行政書士となる資格を有する者には、試験合格者、弁護士、公認会計士、弁理士、税理士となる資格を有する者、公務員OB等があり、とにかく間口が広いのです。 事業法人のオーナーが、顧問弁護士と顧問税理士に「うちのビル、ワンフロア貸すから行政書士法人やってよ。」というケースもありえます。行政書士業務獲得のための営業、事務作業、書類提出代行は、行政書士でなくてもできます。 事業法人の従業員が、営業、書類作成、提出代行を行い、行政書士は、業務の管理と職印押印をすれば合法に行政書士業が出来るのです。法人化法は、開業行政書士にとって大きな脅威になり、事業会社等の参入を促進します。 今後の行政書士業界は、大企業がバックについた大規模行政書士法人の参入により、市場の寡占化が進むことでしょう。建設、宅建、産廃分野は特に寡占化すると思われます。 行政書士法が廃止されない限り、「行政書士制度」や「行政書士の名称」は消えませんが、事業として成り立たない「食えない事務所」が多数になり、廃業者が増加し、会員数、行政書士受験者が激減し、単位会や連合会組織に大きなダメージを与えると考えられます。 反面、大行政書士法人の代表社員が輪番で会長をするようになるので、総会が荒れなくなる、会務がはかどる、スケールメリットにより報酬が低廉化し一般国民が利用しやすくなる、所得の種類が事業所得から、給与所得になり、給与所得控除が使えるので節税できる、事業主、従業員が、厚生年金の適用、健康保険組合、厚生年金基金への加入により、社会保険の恩恵が受けられるようになるというメリットもあります。 開業志望者のみならず、行政書士は、「法律」だけではなく、「市場」をよく検討しないと生き残れなくなりました。我々は、法律で制度が規定されていれば食えると考えがちですが、実際は、市場がすべてを決定するのです。 日本の製造業の生産性、品質は、高いですが、法律サービスの生産性、品質は、低いと感じられます。今後は、市場化が、官民共に進む訳ですから市場の検討が、重要なテーマです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年02月06日 15時18分11秒
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