『リカ』(五十嵐貴久・幻冬舎文庫)
少し前、土曜の深夜ドラマでやっていた「リカ」。”リカ”ときけば、個人的には「東京ラブストーリー」の”赤名リカ”をイメージするがそれとは違う。違い過ぎる。(とはいえ、想うひとに猪突猛進迫るところは重なったりする)ドラマが面白かったので原作本を読んだ。五十嵐貴久氏による、2001年にホラーサスペンス大賞を受賞した作品とのこと。ドラマで主人公リカ役は高岡早紀さん、リカに付け狙われる男性本間たかお役は大谷亮平さんが演じていた。おおざっぱにいうと、異常過ぎる女ストーカーの物語。ドラマが先、原作が後、の観点からいえば、ドラマのリカは、健康的で美しすぎるかもしれない。原作のリカはもっとカサカサに乾燥かつドロドロしたモンスター、その違いはおそらく「におい」。原作では「異臭」ともいえるほどのにおいが、リカの身体からたちのぼる描写がちりばめられている。ドラマではこのにおいまでは感じさせられない。ネタばれだが、死体をバラバラにしたり、それを並べたりする描写もドラマではなかった。おそらくグロ過ぎて映像にできない、万人が自由に観ることの出来るテレビでは放送できない、という配慮があってのことか。そんなわけで、異常性では原作のほうが勝り、哀れさではドラマが秀でている。50歳近い高岡早紀が、「雨宮リカ、28歳です」と臆するすることなく語るシーンがその最たる場面。原作はシリーズ化されているようなのでドラマのほうも続編に期待。もちろん、リカ役は高岡早紀一択。