「出来ごころ」小津安二郎
12月12日は日本を代表する映画監督小津安二郎の誕生日であり命日生誕110年、没後50年ということで、その日のgoogleは東京物語になっていました。以前にも書いた通り、自分が一番好きな小津作品は「出来ごころ」(1933年)男はつらいよ的な人情喜劇で、役者の動きが生き生きとしていて「東京物語」など落ち着いた小津の作品しか知らない人にはちょっと異色に感じられるかもしれません。特に子役の「突貫小僧(芸名です)」が素晴らしい!!!最近の日本では、高度経済成長期のサラリーマン+専業主婦という家庭モデル(?)が崩壊してきていますが、そんな形態は人類の長い歴史の中では一瞬の幻でしかなく、日本の落語にもたくさん表現されるように女性は強くよく働いてきているよなと感じる作品。*反面、男はだらしないものです・・・逆に小津後期の代表的な作品では専業主婦的な存在が多く登場しているので、時代の移り変わりを感じます。その中で印象に残っている場面は小津の遺作である「秋刀魚の味」笠智衆演じる主人公の学生時代の恩師(水戸黄門で有名な東野英治郎)が杉村春子演じる娘とラーメン屋を営んでいるという設定。妻に先立たれた笠智衆は岩下志麻演じる娘を嫁がせる一方、杉村春子は父親との関係もあり婚期を逃している。杉村春子が感情を表現する(泣く?)場面は観ている側もきつい。その対比の描き方が“容赦なく”秀逸。(実際にどちらがいいかではなく、その時代背景と登場人物をきちんと描いている)自分は生まれていない時の作品ですが、時代の空気を垣間見られます。この辺りは「メッセージ性を打ち出す」というのは直接的であることが効果的ではないというのを学んだ気がします。今日のMXTV「西部邁ゼミナール」は小津特集で、西部邁が小津映画には孤独としっかり向き合う姿勢が描かれていると言っていましたが、自分もそれは感じます。動きを抑制し、人物と人物の間に空気を感じさせるような空間構成は、溝口健二、黒澤明と違い、登場人物の孤独との付き合い方をより鮮明に描き出していると思います。小津に影響を受けたと公言しているインディーズ映画の旗手ジム・ジャームッシュの名作「ストレンジャー・ザン・パラダイス」では、ドッグレースの犬か競走馬の名前に小津映画の題名がつけられていたのも印象に残っています。ちなみに「出来ごころ」は「Passing Fancy」【今だけ!特別価格!】出来ごころ/浮草物語価格:1,990円(税込、送料別)