「小説を読む」ことの効用は!
以前にもこの小欄でそのことを書いた覚えがあります。自分には自分が 過ごしてきた経験しかないが小説にしてもエッセイにしても自分が体験 していない様々な人生とそのものの考え方があってそれを教えてくれる のであると。 だから実体験しなくとも、知識や考えが広がって人格に寄与してくれる のである。新聞を読んでいるとこんな文章があった。「子どもの頃小説 は現実から逃れたい時の格好の隠れ場所だった。お気に入りの本を開け ばスポンと足元の地面が抜けて,頭の上でファスナーが閉められ、お話 の世界に密閉される。退屈な時間も憂鬱な時間も、一度この”お話袋”に 入ってしまえばなんとかやり過ごせた。図書館や駅の本屋さんにずらり と並んだ本を見ると、この世には無数の隠れ家があるのだと感じられ、 とても心強かった」 私も昔小説に没頭していると、虚構(架空)の世界と現実がごっちゃに なって足元がふわふわして心許ないことがあった。でもあれは自分が違 う世界に浮遊していた為の感覚だったろう。学生生活を終えて社会人と なってからもそれはつづいた。司馬遼太郎さんのファンで彼の「竜馬が ゆく」「翔ぶが如く」「菜の花の沖」「坂の上の雲」等順不同であるが、 新作が出るたびに読んでいた。正に司馬さんの書く世界に浮遊させられ たのであった。時代は違っても考え方とかものに立ち向かう姿勢などは 読み取っていた。飽くまでも史実に基づいた虚構の世界ではあるが読者 としては楽しく有益なものである。 2020年は本当は東京オリンピックの年であり、このコロナウイルス騒ぎ さえなければ喜びと期待に満ち溢れた夏の入り口だった筈である。 残念ながら今世紀初の大きな試練を地球の人類は与えられた。どの国でも みんなそれぞれ禍を克服しようと努力しているが、ママならない。 その中で呻吟する一個人として、どうするかが問題である。もし運よく永 らえたなら、与えられた残る人生を最大限に活動してみたいと思っている。