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カテゴリ:思い出
この細い山道を越えて行くと隣村へ抜けられる。 神津佐から泉という村へ通り抜けられる。 神津佐と書いて「こんさ」と読む不思議な地名だ。 まだ幼い頃、ここに鶴の番いが舞っているのを見たが、 それは記憶のすりかわりだろう。 こんな所に鶴が居るはずが無いからだ。 でも、そんな映像が記憶に残っているからおもしろい。 この山道の途中に大きな池があった。 鬱蒼と木々が生い茂る大きな溜池だった。 そこに人の背丈程もある巨鯉が居た。 恐ろしいくらい大きな錦鯉である。 これは本当の話だ。 見つけた時は驚いて大興奮したのを覚えている。 黒い水面に数匹の巨鯉がゆったりと泳いでいた。 魚釣りに狂っていた小学生の頃の話である。 早速、友達と釣りに行くことにした。 大鯉釣り作戦を立てた。 大物釣り用の仕掛けを作った。 釣れたら引きずり込まれるかも知れない。 休みの日に二度ほど挑戦したがそう簡単には釣れなかった。 興奮して神津佐の家でその話をすると、 それは神津佐のじいちゃんが大事に育てていた鯉かも知れないと言う。 小さな錦鯉を大事に大事に育てていたらしい。 その鯉が何年もの歳月を経てここまで巨大に育ったのだ。 それを孫が釣ろうとしているんやからおかしな話やなと言われた。 それからその巨鯉を釣りに行くのは止めた。 そんなことを思い出した。 その山道を何十年かぶりに車で走ってみた。 釣竿を持った少年の自分に出会えそうな気がして。 しかし、その池も鯉も見つからなかった。 この木々のトンネルの向こうに…。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 2, 2020 08:00:05 PM
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