カテゴリ:読書日記
「赤塚不二夫のことを書いたのだ!!」/ 武居俊樹 (文藝春秋) 2005.5.30.発行
新大阪駅構内のBOOKSキオスクで見かけて、何故か読むべき気がして購入。 一気に読んでしまった。 そして、久々に、心を揺さぶられて、涙を流してしまった。 ぱんとこは、赤塚不二夫の全盛期を知らない。 再・再・再・・・放送のバカボンとか、アニメは少しは見たことがある。 しかし、マンガは、小さい頃に、親戚の家にあった古い本で、ちらっ・・と覗いたくらいしかない。 その時の印象は、 「楽しそう・・だけど、何か、怖い」 そして、その怖さの中に、言いようのない、不思議な淋しさも感じていたように思う。 大人になって、何かの編集本で、マガジンに連載されていた当時のバカボンの原稿が載っているのを見て驚いた。 「うわー、凄い発想!! 今の作り手には出てこないよなあ~」 その時、少し、赤塚作品を読んでみようかな・・という気持ちが沸いてきた。 この本を読んで、あの幼い頃の印象と、大人になって惹かれた部分が、 その点と点とが、線でつながった感じがした。 ギャグの語源は 「猿ぐつわ」。 「自由な言論の禁止」。 「窒息して吐き気を催す」(ギャグは喉が詰まる様子の擬音から来ている)。 転じて、脚本にないアドリブやジョーク(つまり、許されていない・ありえない筈の「はみだし」た台詞や演技)をさすようになった。 赤塚氏は、ギャグを、ユーモアの先にある、「吐き気を催す」次元まで追求しようとしていた と武居氏は書いている。 この下りを読んだ時、あの幼い日に感じた怖さと淋しさ、大人になって感じた新鮮な驚きが何から来ていたのかに、深く納得した。 そして、赤塚氏の担当にして戦友である武居氏が語る 夥しい量のエピソードから立ち上ってくる、 赤塚氏が、ギャグを、命がけで追求していく猛烈なエネルギーと、 そのエネルギーを生みだしている、彼の生々しい人間観に圧倒される。 人間というもの 生きるということ その裏も表も骨の髄から知り尽くした人なのだ。赤塚不二夫という人は。 ちょっと、常人には及びもつかない気がする。 ・・でも、赤塚不二夫と同年代の人達には似た経験をしている人も多いはず・・ ・・そう思うと、その年代の人達もとんでもないね。 今、仕事の関係で知り合う60~70才代の人達の強さに驚かされることが多いんだけど、 その訳が少しわかった気がする。 彼は、本当は、手塚治虫氏のような、ストーリー漫画が書きたかったのだと言う。 しかし、きっと、ギャグ漫画でそれをやった人なのだと思う。 常に、社会の常識という守りを突き破り続けることで、 人間そのものの根底を追求しつづけていたのだと思う。 こんな説明臭い言葉、きっと、赤塚氏は嫌がるのだろう。 しかもまだ読んでないのに。 でも、読んでみたい・・と思う。 赤塚不二夫氏は、今、脳内出血の手術後から二年以上昏睡状態にあるという。 いま彼はどんな世界にいて、どんな夢を見ておられるのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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