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カテゴリ:ちょっとした知識
常盤 雪さんから、掲示板に質問を頂きました。
しかも、この質問は、かなりの難題です。質問内容が、多岐にわたる、フランスパンの根っこの質問であり、回答には、私の経験と知識をフル動員しても、よくわからない部分もあるからです。でも、できるだけお答えします。 でも、文字だけで、解決するでしょうか・・・。本当に、文章力が問われますが、表現力がないので、長文になってしまいました。掲示板では文字制限がありますので、また、例によって、こちらで。 そして、いつものように、根拠のある推測です・・・。 >生地が固い、次に発酵不足とジャムおばさんへのレスにありますが >普通のフランスパン生地の腰が強い、もしくは締めが強い時も >発酵不足になりやすいでしょうか? > >反対に腰がない、締めが弱い時はホイロは短めと思ってよいでしょうか? まず、「生地の状態」と「醗酵の状態」を切り離して考える必要があります。これを一緒に考えると、二次方程式よりも難しいです。 先に、生地の状態から考えていきましょう。 常盤 雪さんの書いている「腰の強さ」と「締めの強さ」とは、生地の状態=「腰の強さ」、整形の加減=「締めの強さ」と、私は捉えていいのでしょうか?そう考えていいのでしょうか? そうするならば、生地の腰の強さは、グルテンの強さに由来するので、その腰の強弱は、時間経過と吸水で変化します(あと、酵母から出てくる酵素と、生地の酸化も関係しているのですが、さしあたって、置いておきます)。 フランスパンの生地を作り上げる段階で、グルテンの形成は終わっているので、そこから先は、グルテン膜の崩壊との戦いと思って下さい。グルテン膜は、時間の経過により弛んでいきます・・・。 次に、醗酵状態を考えていきましょう。 醗酵を開始した酵母は、周りの小麦粉のデンプンを麦芽糖に分解し、ブドウ糖に分解し、やっとのこと栄養を手にした酵母は、炭酸ガスを発生させます。 さて、これで、やっと生地と醗酵が組み合わさる訳です。 醗酵がすすむと、酵母はどんどんデンプンを食べ続け、炭酸ガスを生成し、グルテン膜の中にガスを溜め込み、生地全体が膨らんでいきます。 そうやって、生地は緩み続けますが、風船を膨らますように、炭酸ガスが生地内部にたまっていきますので、実際にはゆるんだようには、見えません。緩んだ分だけ、炭酸ガスがたまってくる生地内部の気泡の表面積が大きくなるからです。 と、こんな具合で、お答えする前の事前情報をお伝えしました。 今回の、最初の質問への回答を、さっぱり書くと、「生地の腰と締め」と「醗酵の過不足」は関係あるのですが、「生地の腰と締め」で、「醗酵の過不足」は判断できない、と言う事です。「生地の状態」と「醗酵の状態」は、別の軸で進んでいる事ですので(といっても、二重螺旋のようにからまっていますが)、別々に考えたほうが、理解しやすいと思います。 >まずはパン・トラディショネルの生地をしっかり作る事が先決でしょうか? パン・トラディショネルの生地は、本当に基本の基本ですので(といっても、一番難しかったりしますが・・・)、ストレートできっちり状況を把握しながらやっていかれる事が、一番の近道です。 理想的なパンのイメージがあるのでしたら、それに向かって、いろいろ手順を工夫してやってみては、いかがでしょう。 ただ、一つだけ、問題点があります。 パン・トラディショネルには、力のあるオーブンが必要です。必要な理由は、内部の気泡まで、はやく熱を通してあげないと、皮が固まってしまい、ボリュームも内層も、思ったようにいかないからです。 外部からじっくり火を通すと、その間に、外側から固まっていき、気泡が膨らもうにも、膨らめなくなってしまいます。 御家庭のオーブンでそれを改善する為には、なるべく厚い目の石のプレートを、事前に温めておいて、石から出てくる遠赤外線を、なるたけ生地に浴びせかけてあげる、ぐらいしか、思い付きません。 プロのパン屋で、石釜を備え付けているお店のパンが、中までしっかり火が通り、外がカリッとしているのは、石釜の遠赤外線が、効果絶大だからです。 フランスパン専用オーブンでも、下面に石が敷いてあります。これも、同じ理由からです。全面が石に被われている、石釜には負けますが、効果はあります。 オーブンの力さえあれば、弱い粉でも、十分にいいフランスパンが出来ます。 御家庭では、その点だけ、設備的に限界があります。他は、なんとかなるものです。 上記だけでは、ちょっと足りない部分もあるのですが、補足質問回答なりで、対応させて頂きます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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