テーマ:本のある暮らし(3285)
カテゴリ:本
「これ、読んでみない?」 その本を渡すと息子は、 「をををを!これは!」 と目を輝かせ、その場で夢中で読み始めた。 「ホームレス中学生」(著者: 田村裕 出版社: ワニブックス)。 お笑いコンビ「麒麟」の田村クンが書いた自叙伝である。 まあタレント本といえなくもないが、しかしこれは、ほんの15年ほど前に、中学生にして住む家も親も失い、公園でひとりホームレス生活をした少年の実話である。 腹が減りすぎて草やダンボールを食べてしのいだ話や、雨に打たれて風呂代わりにしたという話などは、「俺も昔は食えなくて苦労してさあ~」などと貧乏話をネタにしがちなそこらの芸人たちを一発で黙らせるほどの迫力がある。 しかしこの本の魅力は、彼のその貧乏エピソードにあるのではない。 普通だったら、中学生にして一家離散でホームレスとなった「不幸でかわいそうな少年の体験記」となるはずの物語だが、この本はまったくちがう。 私はこの本を、たくさんの人たちに支えられて生きてきた「幸せな少年の体験記」として読んだ。 そこにあるのは、うちの子もよその子も関係なく手をかけ目をかける大人たちのあたたかなまなざし。 本気で少年とかかわりをもつ学校の教師。 貧乏だろうとホームレスだろうと仲間として認める子どもたち。 そして困ったら助けを求め、困っている他人に助けの手を差しのべる関係がある。 あれほどの悲惨な体験をしておきながら、彼はひとことも恨み言を記していない。 むしろ「ぼくの人生を愛している」とまで書いている。 彼の「(どん底)にもかかわらず笑う」ユーモアのセンス。 こんな目にあった「にもかかわらず」人生に世界にYESと言う彼の姿勢に、ほんとうに心うたれた。 また、母親の死から数年たってはじめてその死を受け入れていくプロセスも、感動的だった。 最後、延々と続く謝辞の先頭に、(当然恨んでもおかしくはない)父の名があるのを見て、やっぱり私は涙が出た。 息子よ、ぜひ最後まで読んでおくれ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.10.18 06:51:48
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